北米国際オートショーにて、「I.D. BUZZコンセプト」として初公開されたのが2017年。あれからずいぶん待ったものだが、ついに日本に上陸したフォルクスワーゲン ID.Buzz。このポップなミニバンを3人の自動車評論家が試乗し評価する!!
※本稿は2025年9月のものです
文:岡本幸一郎、小沢コージ、渡辺敏史/写真:VW、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2025年10月10日号
電気自動車としてよみがえったワーゲンバス
運転支援機能や快適装備を備え、ワーゲンバスを彷彿とさせるレトロモダンなデザインも魅力の「ID.Buzz」。
荷室は後席使用でも充分な広さを確保できるが、シートを倒せばフルフラットにも変形可能。航続距離や動力性能も充分で、長距離ドライブでも安心感が高いのもポイント。
紙のベストカーでは、2025年8月10日号に鈴木直也氏によるレビューを掲載。電動車ならではの軽快なトルクはもちろん、その静粛性と重厚な乗り心地に対してかなり高く評価した。しかし、価格に対する内装のシンプルさには少し納得のいかない点も明らかにした。
今回インプレッションを伝えるのは、岡本幸一郎氏、小沢コージ氏、渡辺敏史氏だ。
重心の低さが走りのカギ! 待った甲斐のあるかわいいクルマ(岡本幸一郎)
本国で発売されてから3年あまり、コンセプトカーの公開からはもうすぐ9年、まだかまだかと待ち焦がれていたところ、ようやく日本にやってきてくれたことをまずは喜びたい。
これまでいくつもかわいいクルマは見てきたが、こんなに大きくてかわいいクルマは初めて。往年の「タイプ2」を知っている人も、よく知らない若い人や小さな子どもだって、この姿を見てワクワクしないわけがない。
よくぞ当初のコンセプトカーからイメージを大きく変えることなく、このデザインを実現してくれたものだとつくづく思う。シンプルなインテリアもID.Buzzらしくていい。むしろあまり高級じゃないほうがこのクルマには似合っている。
車内は広々としていて、頭上一面に広がるパノラマルーフのおかげで、どの席に座っていても大きな開放感を味わえるのもいい。
点数としては、ほぼ7点と大したことはないが、このクルマの魅力はそこじゃない。大柄で重いわりには、大きな不満もなく普通に走れるように仕上がっている。それで充分だ。
その走りを実現できたのもBEVなればこそ。重心が低いので見た目の印象と違って車体がグラつく感覚も小さく、トレッドが広いので安定性が高くて乗り心地も悪くなく、静かでなめらかで力強い。この内容でこの価格なら充分納得できる。
●岡本幸一郎氏の採点チェック
・ハンドリング:7点
・加速性能:7点
・乗り心地:7点
・静粛性:8点
・内装の質感:7点
・コストパフォーマンス:7点
デカい車体に詰め込んだ唯一無二のVWらしさ(小沢コージ)
欠点と利点はハッキリしている。まずデカさと価格だ。長さはプロが全長4.7m台で、LWBが4.9m台と、アルファードとほぼ一緒で高さもそう。
ただし横幅1985mはアルファードより13cm以上も広く、ほぼ2mと相当デカい。価格もプロ888万9000円でLWB997万9000円だが、プロにIQライトほか先進ライト系と3ゾーンエアコン、パワーシートや2列目ヒーターなどを付けると+70万円でほぼ1000万円。ぶっちゃけVWの価格じゃない。
ただし、よさも予想以上で、外観のクリアな質感や、国産ミニバンや独プレミアムミニバンにない可愛さは凄い。インテリアもソフトパッドこそ少ないが明るく、『バズ・ライトイヤー』などピクサーアニメが似合いそうな洋物アットホーム感はほかにない。
走りもボディのガッチリ感は予想以上で、モーター最大トルク560Nmの力感も凄い。
電動化でVWらしさはどこにいったか? と思いきや、昨今並行輸入で入っていたワーゲンT6カリフォルニアなどの商用VW系が持つよさを備えている。これらは新車で買うとヘタすると1300万円超えで、ある意味ID.Buzzの日本価格は安い。
1ユーロ170円で計算すると1000万円超え。実際、輸入車に馴染みがない小沢の友人で、マツダ CX-80からの乗り換えを考えている人がおり、想定外のファンをも取り込んでいる。デカくてお高いが、ほかにないよさアリだ!
●小沢コージ氏の採点チェック
・ハンドリング:8点
・加速性能:8点
・乗り心地:8点
・静粛性:8点
・内装の質感:8点
・コストパフォーマンス:5点



















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