昨年(2019年)12月26日、日本経済新聞上で「三菱自動車ディーゼルエンジンの新規開発中止」を報じる記事が出た。
三菱のディーゼルと言えば、昨年6月にエクリプスクロス、同じく2月にダイナミックシールドが導入されたディーゼルタイプのデリカD:5が絶好調なはずなのだが…このタイミングでなぜ?
疑問が尽きぬまま、三菱に取材へと向かった。
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※本稿は2020年1月のものです
文・写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2020年2月26日号
■「2021年をもって搭載車消滅」と報じられたが……
記事では、2021年までに主力車からディーゼルエンジンの設定をなくし、既存のディーゼル車事業も大幅に縮小する、とされ、三菱自動車はディーゼル車の新規エンジンの開発を中止する方針を固めたと断言する。
日経の記事ではその背景として、欧州を中心にディーゼル離れが進み、世界販売は今後約10年で4割減る可能性があると分析。さらに電動化への対応に迫られることで、開発の効率化を求める必要があることも挙げている。
確かに中長期的展望に立てば電動化への移行は避けられない命題だ。しかし三菱自動車は「i-MiEV」でピュアEVをいち早く市販開始しているし、アウトランダーPHEVではきめ細かい2モーター制御技術を確立している。
電動化では国内メーカーでも先進的なメーカーである上、今や日産とのアライアンスのなかで、日産との技術交流もあり、電動化に対する知見は世界的にもリーダー的な立場にある。
「少なくとも現時点で三菱自動車として報道にあるような見解を示したことはありません。根も葉もない話です」
三菱自動車広報部ではこのようにコメントする。
「デリカD:5では現在新車販売の9割がディーゼルエンジンです。エクリプスクロスには昨年6月にディーゼルエンジン搭載モデルを新たに追加したばかり。こちらも販売比率はガソリンターボとほぼ半々で、ディーゼルエンジンの価値をお客様に認めて頂いていると考えています」と三菱自動車広報は続ける。
現在三菱自動車が国内で販売するモデルでは、このデリカD:5とエクリプスクロスに直列4気筒、2.2Lディーゼルターボエンジン(4N14型)を搭載する。もちろん日本のポスト新長期規制、欧州のユーロ6規制をクリアするクリーンディーゼルだ。
グローバルでは1.8Lの4N13型が欧州向けASX(日本名RVR)、ランサー(日本名ギャランフォルティス)に、2.4Lの4N15型を東南アジア向けのパジェロスポーツやトライトンに搭載するほか、陸上自衛隊の73式小型トラックにも搭載する。
■三菱はディーゼルエンジンを止めるのか!?
日経の報じる「新開発」がどのレベルを意味するのかがわからないのだが、確かに長期的な展望を考えれば、現在の4N1系とはまったく異なる新系列ディーゼルエンジンを「新規開発」する可能性は低いかもしれない。
一般的にエンジンは数十年スパンで改良をしながら展開していくことを念頭に開発される。4N1系は2006年に新開発が発表され、市販車に搭載されたのは2010年のことだ。
つまり、初号機登場からまだ10年しか経っておらず、この先改良や派生排気量などの開発は継続され、最低でも今後10年以上はディーゼルエンジンが継続されると見るのが妥当だ。
しかも日本だけではなく、三菱自動車にとって主力市場となる東南アジアではディーゼル需要はまだまだ高い。さらに自衛隊への納入もある。過酷な使用環境にさらされる自衛隊車両にはディーゼルエンジンは不可欠だ。
おそらく、日経が伝える「ディーゼル撤退」は、「次世代に向けた新規開発は計画が白紙だ」ということを伝えているのではなかろうか!?
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