日本市場のコンパクトカーカテゴリーにおいて、デビュー以来、安定した人気を保ってきたホンダ「フィット」。しかし、ここ最近は苦戦を強いられており、2022年1月から3月までの自販連国内登録車ランキングでは、ヤリスやノート、アクアといったライバルコンパクトカーのみならず、ラージミニバンのアルファードにまでも、差を付けられている状況だ。
かつて初代モデルが、33年間販売台数トップだったトヨタ「カローラ」を王座から引きずり下ろしたほどの人気を誇った、フィット。フィット失速の理由を考察しながら、今後の展望についても考えていく。
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:HONDA、ベストカー編集部
先代までは順風満帆だったフィット
ホンダのコンパクトハッチバック「ロゴ」の後継車として、2001年6月に誕生した初代フィット。新機構「i-DSI」を採用した高効率の1.3Lエンジンを搭載し、前席の下に燃料タンクを配置する「センタータンクレイアウト」の採用と、やや背高のパッケージングによって、広々としたゆとりの空間を確保。全長4mを切るサイズながら、後席に大人が乗っても膝周りに十分なスペースがあった。
外観デザインも実用性と走りの良さの両面をしっかり感じさせるバランスの取れたものであり、控えめながらも商品力が高く、前述したように、デビュー翌年の2002年には、それまで33年間にわたって登録車販売台数でトップだったトヨタ「カローラ」から王座を奪い1位に。コンパクトカーに求められる魅力をはっきり具現化させ、それまで「コンパクトカーだから仕方ない」という既成概念の部分を見事に覆したモデルだった。
大ヒットとなった初代に引き続き、2007年10月に登場した2代目フィットもまた、魅力的なモデルだった。デザインは初代のイメージを踏襲しつつボディサイズを拡大し、スポーティなスタイリングとi-VTECエンジン搭載でクルマ好きにも受け入れられる仕様に生まれ変わった。2010年のマイナーチェンジではハイブリッドモデルを追加。初代に引き続き、堅実な路線と相変わらず魅力的なパッケージングが支持され、大ヒットを記録する。
続く3代目は2013年9月に登場。パワートレインと車体を完全新設計し、世界のコンパクトカーのベンチマークにふさわしいクルマを目指して開発された。デザインはフィットらしさを受け継ぎつつも、立体的な造形の前後バンパーや存在感のあるヘッドライトデザイン、スポーティなプレスラインなどダイナミックな印象に生まれ変わる。このアグレッシブな印象も、フィットの価値を高めるポジティブなものとして受け入れられた。
と、3代目までは順風満帆なフィットだったが、2020年2月に4代目フィットへと切り替わってからは、デビューしたての頃は「新車効果」もあってか好調な販売台数を記録したものの、その後は伸び悩み、2020年12月に登場したノートと、2021年7月に登場したアクアの躍進によって、その存在感はさらに薄くなってしまった。
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