テーマである「癒し」が足を引っ張っている
現行4代目フィットは、歴代フィットが築き上げてきた性能や機能をベースに、デザインやグレード構成を刷新。特に外観は、アグレッシブだった3代目から一転、柔らかくて優しいデザインに生まれ変わった。
くりっとした優しい表情のヘッドライトと小ぶりのグリル(タイプによってはグリルレスに近い)は「かわいらしさ」を感じさせる。インテリアも、モダンで落ち着いた家具に囲まれたようなリラックスした空間が作り出され、2本スポークのステアリングもどことなく力が抜けていている。
フロントピラーの形状を工夫して前方視界を改善させたり、ハイブリッドをe:HEVに刷新することで、コンパクトカーとしての魅力を高めているものの、先代までに比べ、インパクトに欠けるデザインが、フィット失速の最大の理由だと筆者は考える。
テーマである「癒やし」を反映させたものだというのは理解できるが、鋭い表情のヘッドライトでスタイリッシュに決まったデザインのクルマが多い中、現行フィットのデザイン(特にフロント)は、よく言えば、プレーンで質感の高いデザインなのだが、悪く言えば、「欲しい!」と思わせるような、所有欲を満たしてくれるものに乏しいデザインだ。
また、スポーティなグレード「RS」がなくなり、「NESS(ネス)」というわかりにくいネーミングと、中途半端な走り(※サスセッティングはベースのフィットと同じで、スポーティらしさは一切ない)となったのも、クルマ好きからみるとちょっとピンとこない。それならば、シャキッとしたフロントフェイスのN-BOXの方が、クルマ好きとしては選びやすい。
現行型フィットとプラットフォームを共有するSUV「ヴェゼル」は大ヒットしており、また同じく現行型フィットをベースとする「フリード」も今年中の新型登場が予想されており、こちらも大いに売れるだろう。フィットの「素性のよさ」であったり、「クルマとしての基本設計が優れている」という点については、辛口評論家の方々でも異論はないであろう(いまひとつ「これだ!」という推しポイントが見つけづらいところは認めます)。
マイナーチェンジで巻き返しなるか!?
フィットは今年8月にもマイナーチェンジするという情報だ。グリルやバンパーが変更されるほか、アウトドア志向の「クロスター」がアンダーガード装着でさらにSUVテイストを強化、そのほか、「RS」グレードの追加や6速MTの設定という内容が噂されている。
個人的には、RSの追加が走りの良さをアピールし、イメージアップにつながっていって欲しいと思っている。もちろん、フィットの良さは室内空間の広さや機能性であるが、ホンダらしい走りの良さが伝われば、フィットそのものの魅力も伝わりやすくなるのではないだろうか。
大人気カテゴリーを牽引してきた存在だっただけに、現在の販売苦戦の状況は寂しいところだ。ライバルも存在感を増してきているだけに、どこまでフィットの優位性を保ち、その魅力を発信し続けられるか。まずはマイナーチェンジに期待したい。
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