現在、スズキは小型登録車メーカーとして国内外で強さを発揮している。そのきっかけを作ったのが「スイフト」だ。スズキの大きな未来を作り上げた、小さなクルマの軌跡を紹介していく。
文/佐々木 亘、画像/SUZUKI、ベストカー編集部
■泣く子も黙るスイフトが大人を唸らせる存在に
スイフトが誕生したのは2000年。初代のHT51S型は軽自動車を乗用車サイズまで大きくしたようなクルマであり、売りは安さにあった。「泣く子も黙る79万円」というCMを覚えている人もいるだろう。
当時の一般的な軽自動車を下回る最低価格は、大きな注目を浴びる。
ただ、軽自動車のサイズアップにとどまり、安いだけだった初代スイフト。当時のスズキのイメージは、軽自動車メーカーにとどまっている。
しかし2004年に登場した2代目が、スズキの未来を切り開く存在となった。
スズキの世界戦略車として登場したZC11S型スイフト。登録車専用の新設計プラットフォームを導入し、クルマの質が格段に上がった。2代目スイフトは、スズキのコンパクトカーを大きく刷新する存在になっていく。
■現在のスズキへつながる2代目スイフトの基本コンセプト
初代と比較して、ワイドトレッド、低重心、ばね下重量の低減を行った2代目は、走行性能を重視したコンセプトが高次元でマッチングし、スズキのイメージを大きく変えた。
筆者も6年程愛車として乗っており、手応えのあるシャープな操作フィールは、当時のどの国産コンパクトカーよりも上だったと思う。
塊感のあるボディとは裏腹に、コクピットはシンプルそのもの。スポーティなシートに身を委ねると運転に集中する環境が出来上がる。
真面目なクルマづくりにスズキが心血を注いだことがよくわかる仕上がりだ。さらに2代目スイフトには、スズキらしい遊び心も満載だった。
例えばタコメーター、0が時計の6時の位置にあり、針は真下を指した状態からアクセルONとともに上がっていく。
時計の9時の位置まで針が上がればシフトチェンジのタイミングを迎え、さらに12時の位置を迎えると、ちょうどレブリミットに達する。
この表示方法はバイクのメーターを思わせ、エンジン回転数の勘所がつかみやすい。針の動きにもワクワクさせられたものだ。
上質だけど廉価、シンプルなようで遊び心満載という、現在のスズキが得意とするクルマづくりが、2代目スイフトには溢れている。
このスイフト誕生以降、スズキは軽自動車メーカーとしてはもちろんだが、登録車でも強さを発揮する。
コンパクトSUVのSX4、欧州で高く評価されたスプラッシュなどを生み出しながら、スズキが軽自動車開発の裏に隠していた、小型自動車製造での地力を発揮するようになっていった。
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