電化に積極的な欧州メーカーの中でも、ひときわ意欲的にBEVを登場させ、CO2削減に取り組んでいるボルボ。そのボルボBEVファミリーの末弟として登場したのが、ボルボ EX30。EVとしては割と中型な部類に入ってきそうだが、果たしてその実力や如何に?
※本稿は2024年3月のものです
文/片岡英明、写真/西尾タクト
初出:『ベストカー』2024年4月26日号
■ボルボのさらなる成長と挑戦に期待できる一台
CO2削減という大変革に挑んでいるボルボは、意欲的にバッテリーEV(以下BEV)を増やし続けている。その末っ子として送り出されたのがEX30だ。日本に最初に上陸したのは、トップグレードの「ウルトラ」である。
試乗したのはミストと呼ばれる内装のEX30だ。コルクや再生PET樹脂を使ったノルディコ素材や一年草の亜麻を原料としたパネルなどを特徴とする。シートにはリサイクルポリエステルを70%採用するなど、地球環境にやさしいことに徹底してこだわった。
大柄なBEVは多いが、EX30は日本で運転しやすいジャストサイズだ。日本仕様は全高を立体駐車場に入れる高さに抑えている。サイズ的にはヴェゼルやリーフに近いが、全幅は少し広い1835mmだ。輸入BEVではBYDドルフィンとATTO3、ヒョンデコナがサイズ、車格ともに近く、ライバルになるだろう。
■操作系には慣れが必要。廉価版があれば魅力が増す
運転席に乗り込んで驚いた。目の前にメーターがなく、情報は中央にセットされた大型スクリーンを通して確認するようになっていたからである。キーを持っていればドアの開閉もモーターの起動も自動だ。
スターターボタンもないので最初は戸惑う。慣れると便利だと感じるのだろうが、中央のタッチパネルを主体とする操作と情報確認は短時間では使いこなせなかった。ヘッドアップディスプレイが欲しくなる。
モーターの最高出力は272ps、最大トルクは35.0kgmだ。0-100km/h加速の公表値は5.3秒だが、モーターの滑らかさが際立っているし、車重もそれなりだから飛び抜けて速いとは感じさせない。
大きな進化と印象に残ったのは巧みな制御である。回生ブレーキを使っての減速コントロールは驚くほど上手だ。狙いどおりに減速し、ワンペダルで完全停止まで違和感なくこなした。アダプティブクルーズコントロールは、もう少し熟成に時間がかかる印象だ。
最新の専用プラットフォームに組み付けられたサスペンションは、ちょっと硬めの味付けとしている。今までのボルボとは一線を画す機敏な動きで、リア駆動らしい軽やかで素直なハンドリングも好ましい。気持ちよくノーズが向きを変え、乗り心地も悪くなかった。
バッテリー容量は充分な69kWhだ。一充電走行距離は560kmである。廉価モデルが加われば、より魅力を増す上質なBEVだ。
●ボルボEX30 諸元表
・全長×全幅×全高:4235×1835×1550mm
・ホイールベース:2650mm
・最低地上高:175mm
・車両重量:1790kg
・最高出力:272ps/6500~8000rpm
・最大トルク:35.0kgm/5345rpm
・一充電航続距離:560km
・バッテリー容量:69kWh
・トランスミッション:1速固定式
・駆動形式:後輪駆動
・最小回転半径:5.4m
・車両本体価格:559万円
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