「ハイブリッドはバッテリーが10年でダメになる」。2010年代前半のハイブリッドカーに対する評価は、こんなものだった。前評判よりもかなり頑丈にできていた10年以上前のハイブリッドカー。果たしてどこまで乗れてしまうのか、耐久性や寿命を考えていきたい。
文:佐々木 亘/写真:TOYOTA
■10年10万キロでダメになる個体はごく少数
初代プリウスの前期型に限り行われていたハイブリッドバッテリーの永年保証が、つい先日(2024年3月末日)終了した。
当時のプリウスは、長期間使用されない場合や急激な加減速を繰り返すと出力制限警告灯の点灯可能性があり、事象発生のたびにハイブリッドバッテリー交換が必要だったため、トヨタは当該プリウスに限定して、ハイブリッドバッテリーの永年保証を付けていたのだ。
それほどまでに、初代プリウスにおけるハイブリッドバッテリーの品質は、心もとないものだった。しかし、2代目以降では大きく改善している。そして、国民車とも言われた3代目プリウスでは、ほとんどの個体が10年・10万キロの使用に耐えられるものになった。
今でも「ハイブリッドはバッテリーの耐久性が」という声を、販売現場で耳にすることはあるが、その心配には及ばないだろう。普通の使い方なら、10年も10万キロも、よほどのことが無い限り軽くクリアしてしまうのだ。
■ニッケル水素は長生き確定!! じゃあリチウムイオンはどう?
3代目プリウスをはじめ、多くのトヨタ車・レクサス車に搭載されてきた、ニッケル水素バッテリー(駆動用バッテリー)は、新車から10年もしくは走行距離が10万キロを超えた車両でも、トラブルはさほど多くはない。
筆者が販売現場に従事していた時も、ハイブリッドバッテリーの交換事案は数えるほどだ。販売台数から見れば、極めて少数といえる。
実際に筆者のもとで、2012年9月から元気に動いている30系プリウスも、初度登録から12年目を迎え、約18万kmの走行距離となるが、ハイブリッドシステムはおろか、他の箇所にも大きなトラブルは起きていない。
バッテリーの劣化で悪くなると言われていた燃費も、夏場は225サイズの18インチタイヤを装着して19km/Lだ。195/65の15インチスタッドレスタイヤを履く秋から翌春までは、現在も平均燃費20km/L超えである。
ここまでヘタらないのは、筆者も予想外だったが、ここまでくるとどこまで元気なまま走れるのか、トコトン試したくなってくるものだ。3代目プリウス以降のニッケル水素電池の品質は、高い次元で安定していると考えていいだろう。
現在の主流となっている、後発のリチウムイオン電池に関しては、現在も実地による耐用試験の最中と見るべきだが、それでも10年・10万キロ程度でへこたれるものではないと思う。
ハイブリッドが壊れやすいというのは、初代プリウスの時代の寓話のようなものなのだ。
■乗れば乗るほど耐用年数は長くなる!? しっかり乗れば長寿も夢ではないぞ
安心の耐久性は、現在も元気に走る30系プリウスの数で証明できたと思うが、ハイブリッドバッテリーも充電池だ。使い方によっては、短い期間で天寿を全うする可能性もある。
特に、短期間でハイブリッドバッテリー交換に至ったクルマに共通するのが、年式の割に走行距離が伸びていないという点。
具体的な数字を出せば、年間走行距離3000km以下の車両だ。このくらいの年間走行距離なら、HEVの恩恵(経済性の良さ)も受けにくくなるから、純ガソリンエンジンのクルマを選んだ方がお財布にも優しいと思う。
逆に筆者の愛車もそうだが、若干過走行気味の方がハイブリッド系統のトラブルは少ない傾向にある。これからニッケル水素電池搭載のHEVの中古車を検討するという方は、初度登録からの年数×8,000kmを目安にして、適度に走った中古車を選ぶといいだろう。
走りすぎでハイブリッドバッテリー交換になる例を見たことが無いわけではないが、実際にあったケースは、年間10万キロ以上走行する車両。こちらは僅か4年、走行距離4万kmを超えたあたりでバッテリー交換となったわけだが、これはハイブリッドバッテリーの大往生とも言えるケースである。
ハイブリッドカーは長持ちするクルマだ。燃費の良さを武器に、クルマ移動を楽しみながら、多くの方にハイブリッドカーと上手く付き合ってもらいたい。
【画像ギャラリー】ハイブリッドバッテリーも地道に進化!! 前評判より意外と元気な歴代トヨタ プリウス(27枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方