道路上では巨体の大型バスも 別の乗り物と比べるてみると……マジか!?

■あふれた水の量が船の重さになる「排水トン」

 総トンのほかにも「排水トン」という単位もある。例えば容器に表面張力スレスレになるまで海水を張って、そこに船を浮かべ、あふれ出た水の量=排水量からトン数を割り出す方法がこれにあたる。

 排水トンは重さを表しており、純粋な船本体の重量になる。排水量10,000トンならその船は自重10,000トンだ。排水トンは主に護衛艦や潜水艦など、「艦」が付くミリタリー系の船に使われる。

排水量7,250トンの「こんごう」型護衛艦
排水量7,250トンの「こんごう」型護衛艦

 大型路線車をそのまま海に入れても、泡を立てながら沈んでしまうので、ここでは1.2メートルまで沈み込んだら、あとは浮いていられるように出来ていると考えて計算してみよう。

 この場合、長さ×幅×水面下の高さで体積が出せる。大型路線車に一般的なスペックの10.5×2.5×1.2mで計算すると31.5立方メートルになる。

 ただし、さすがに船底まで直方体をしている船などなく、下に行くほど細くなっているのが普通だ。本当にザックリだが、計算して出た直方体の体積に対して、1/3〜1/1.5くらいが実際の排水量になる船が多い。

 それを踏まえて、容器からあふれた水の実際の体積が、直方体の1/3だとしたら10.5立方メートルになり、海水の重さ1.025kgをかけると、大型路線車の排水トンは「10.76トン」程度だと分かる。

 大型路線車の自重は車種にもよるが10.5トンくらいなので、おおむね排水トンが車両本体の重量に合致していると言える。

■どれだけ積めるかも基準のひとつ

 総トン、排水トンと来て、船にどれだけ物や人を積めるかを基準にした「載貨(さいか)重量トン」という単位も忘れてはいけない。略して「重量トン」とも言い、貨物船でよく使われる。

 載貨重量トンに船本体の重さは含まれていない。貨物や燃料・乗組員など、後から積み込む物や人を合計した重さになる。重量トンが1,000トンなら、その船には1,000トン分まで載せて問題ない。

 大型路線車を重量トンで表すと、まずはタンクに入るだけの燃料の軽油が155リットルだとして約124kg、尿素40リットル分で約44kg合わせて168kg分が確保される。

 次に、定員をドライバー込みで平均的な80名に設定して、自動車の積載量の基準になっている1人あたり55kgで計算すると4,400kgだ。

 燃料168kg+人4,400kgで合計4,568kg。大型路線車の重量トンは「約4.57トン」になるわけだ。

■どのサイズの船に近い?

 平均的な大型路線車の大きさを船的に表すと、5.6総トン、10.76排水トン、4.57重量トンという結果が出た。

 では、似たようなトン数の船にどんなものがあるか。特に近いのは近海で漁をする漁船やプレジャーボートの類で、小型船舶免許で乗れるクラスに相当する。

 総トン数が5トン程度の船は長さ11m、幅2.5mくらい。こちらも大型路線車の車体寸法とよく似ており、外観上もほぼ同じサイズになると考えて良さそうだ。

総トン数19トンの観光船
総トン数19トンの観光船

 唯一異なるのが定員だ。80名乗れる船となれば、総トン数にして19トンは必要になる。もしも大型路線車が海の上を進めたら…小柄な割に物凄く人が乗れる、なかなか特殊な“船”に仕上がるようだ。

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