■日本と似ている!? 欧州連合の「EU規則第561号」では?
トラック運転手の働き方に関して、より複雑な事情を抱えているのが欧州だ。
EU(欧州連合)は一つの経済圏を実現するという理想を掲げているとはいえ、実際には多数の国家の集まりで、トラックで国境を超える国際輸送の機会が多い。
国境をまたいで働き方の基準が変わると、運転手の労務管理が著しく困難になるため、基準の国際調和が必要とされた。
EUには加盟国の法整備を待たずに効力を発する「EU規則」というものがあり、運転手の働き方は2006年のEU規則第561号に規定されている。
さらに、国連の欧州経済委員会(UNECE)に国際輸送に従事する自動車運転者の働き方に関する合意(AETR)があり、2010年にEU規則と同等のルールが導入された。
したがって、EU加盟国と欧州経済圏、AETR調印国は原則として同じルールが適用される。その範囲は欧州と陸続きの中央アジアにまで及び、事実上の国際標準に近い共通ルールとなっている。
基準は日本と同様に細かく数値を規定しているが、連続した長い休息(=週次休息、休日)によって週を区切っている点は米国と同様。
トレーラによる物流を前提に、拘束時間ではなく運転時間の制限を重視しており、連続運転に関しては、4.5時間につき45分以上の休憩が必要な「4545」休憩だ。
この休憩時間は日米より長く、最近は45分の休憩中にバッテリーEVの充電を行なうことを前提にトラック用充電規格の国際標準化を目指すなど、電動化においても共通ルールの優位性を活用している。
複雑な背景を逆手にとり、自らルールを設計することでEUの国際競争力強化に繋げようという、欧州らしい手口ともいえる。