「ウェイクは“シルバーカー”になれる!」 ダイハツの軽自動車づくりに提言

「ウェイクは“シルバーカー”になれる!」 ダイハツの軽自動車づくりに提言

 販売台数の低迷やダイハツのトヨタによる完全子会社化など、“軽”を取り巻く環境は揺れている。そんななか御年84歳の三本氏は、ダイハツウェイクを高齢者向けのクルマとして鋭く評価。

 日本独自の“軽”を高く評価する三本氏の目に、最新の軽はどう映った?

 ベストカー2015年8月26日号
「三本和彦の金口木舌」


ウェイクは高齢化社会にうってつけの“遊びグルマ”

 ボクは、常日頃から70代以上の高齢者向けの「シルバーカー」を作ってほしいと思っています。日本は超がつく高齢化社会ですよ。

 団塊の世代が65歳以上となる今年、3395万人と総人口に占める高齢者の割合は26.8%にまで増え、4人に1人は高齢者という時代。それなのに表だって高齢者専用のクルマって、今ないじゃない。

 電動セニアカーはダメですよ。人間歩かなくなったら、衰えるいっぽうですよ。とは言ってみたものの、ボクは足の調子が悪くてねえ、辛抱ならない状態ですがね。

 といった具合で「シルバーカー」と呼べるクルマがないか探していたら、ありました。そう、ウェイクです。タントもいいですが、ウェイクのほうが「やんちゃ」だし、遊びグルマっていう感じがして、ジジ臭くないよね。

目を見張るダイハツの軽自動車作り……だが、シルバーカーには物足りない

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室内空間の広さは圧巻。左右独立式シートはいいけど、座り心地はもう少しよくしてほしいね

 ただ気になるのは、全高が1835mmと、タントより85mmも背が高いせいで、走りがひょこひょこと、「ひょっとこ踊り」になっていないかということ。

 実際に走らせてみると、レーンチェンジでも転びそうな不安は一切ないし、どっしりとしていて、高速走行での直進安定性も優れていたのには驚かされたよ。

 試乗車はターボ車だからなのかもしれないけど、エンジンパワーも非力さを感じないし、CVTのつながりもスムーズ。いやあ、よくできてるよね、大したもんだ。

 肝心の室内空間ですが、運転席はよすぎるくらいの見晴らしで、後席は独立してスライドするわ、前席との間の膝前空間は航空機のビジネスクラス以上だよ、これは。

 もはや、高級サルーンなんかいらないよね。これで軽自動車なんだから、ダイハツさんは凄いクルマを作ったね、ほんとに。

 ただ、もうちょっとステップ高は低くしてほしいねえ。ボクも含め、足を上げて乗る年輩の方は同じように思っているんじゃないかい。あと5cmは低くしてほしい。

 でも、「シルバーカー」としちゃ、まだ物足りない。例えば助手席から降りる際に握るグリップを増やしてほしい。

 さらには、後席のシートの座り心地をもう少しよくしてほしいし、これだけ広いのだから、オットマン付きにして、足が伸ばせるようにしたら最高だね。

 欲を言えばキリがないけど、福祉車両にある助手席や後席が回転するシート。これがあったら乗り降りも苦じゃありませんよ。ボクはね、後席で新聞やテレビ見たくなっちゃったよ。照明も増やすとなおいいね。

 三本和彦
1931年生まれ、東京都出身。東京写真大学(現在の東京工芸大学)写真技術科を卒業後、1956年より東京新聞に入社。

 その後フリーのモータージャーナリストに転身し、ベストカーを始めとするさまざまな自動車雑誌に寄稿、TV番組の司会なども務めた。現在はベストカーで月に1度「金口木舌」の連載を執筆している。

 ★【金口木舌(きんこうぼくぜつ)】とは…古代中国で官吏が法律などを民衆に示す際に木鐸(ぼくたく。口が金属、舌が木製の鈴)を鳴らしたことから、優れた言論で社会の教えを導く人の例えという意味

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