ミニレジャーバイクブームの中、ポッケに設定されたレアな「ポッケ ミッドナイト」

ミニレジャーバイクブームの中、ポッケに設定されたレアな「ポッケ ミッドナイト」

取材協力:バイク王つくば絶版車館

 小径ホイールのミニレジャーバイクは、1970〜1980年台にさまざまなメーカーから発売されていた。その中でも最も人気があったのはホンダのモンキーであり、その末裔となるモンキー125が現在も製造されている。そんなモンキーに挑んだミニレジャーバイクの中に、ヤマハのポッケことQA50がある。

 
文/後藤秀之
 

6インチホイールのミニレジャーバイク

 ヤマハがポッケを発売した1980年当時、ホンダモンキーは1978年に登場したZ50J-I型が販売されており、大型タンクを持つゴリラZ50J-IIIが併売されていた。スーパーカブ系の4ストロークエンジンを搭載するモンキーに対して、ポッケはミニトレ系の2ストロークエンジンを搭載し、ホイールサイズもモンキーの8インチにに対して6インチとより小径なサイズとされた。

 

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ポッケと同時代のモンキーは、5LタンクのモンキーZ50J-I。前後にサスペンションを持ち、8インチホイールを履く。

 

 

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モンキーの兄弟車となるゴリラZ50J-IIIは、ホイールサイズはモンキーと同じ8インチながら、9Lの大型タンクを持つ。

 

 

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ポップなイメージのポッケのスタンダードモデル。2ストロークエンジンを積み、モンキーよりも径の小さい6インチホイールを履く。

 

 また、ポッケには8インチホイールと10Lの大型タンクを持つ兄弟車フォーゲルがあり、これは明らかにゴリラを意識したモデルであった。その他、同時期のスズキからは1979年に発売したエポ、カワサキが1977年に発売したKV75なども販売されていた。

 

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ポッケの兄弟車であるフォーゲルは、8インチホイールと10Lタンクを持ち、オフロードテスストが強められたデザインを採用。

 

 

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フレームを表に出したパイプラインと呼ばれる特徴的なセミダブルクレードルフレームに、2ストロークエンジンを搭載したスズキのエポ。

 

 今回撮影した車両は「POCKE Midnight(ポッケ ミッドナイト)」という1981年に発売されたリミテッドモデルで、ヤマハが同時期にXS1100やXS650などに設定していた「ミッドナイトスペシャル」に準じたブラック×ゴールドのボディカラーを纏っている。

 

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XS1100などに設定されていたミッドナイトスペシャルは、ブラックのボディにゴールドのエンブレムやホイールが与えられていた。

 

 

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ポッケ ミッドナイトは車体はポッケと同じなので、車名に「スペシャル」は付かない。ブラックアウトされた車体は、精悍さを感じさせる。

 

 

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シートやタンクのモールなど、車体各部に配されたゴールドカラーがボディデザインを際立たせている。

 

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ハンドルが高く、シートが大きいので思ったほどポジションは窮屈では無い。ただ、重心はかなり車体の後ろになるので、ウイリー注意だ。

 

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171cm、65kgのライダーが跨った状態。シート高は660mmと低く、車体もスリムなので足付きはご覧の通り非常に良い。

 

 
 
 

ミニトレ譲りのタフな2ストロークエンジン

 ポッケに搭載されたエンジンはミニトレ系の空冷2ストロークピストンリードバルブ単気筒49ccで、ミッションは4速のボトムニュートラル式である。このミニトレ系のエンジンはGT50には5PS/8000rpm、RX50スペシャルには7PS/9000rpm仕様で搭載されていたが、ポッケには3PS/5000rpmとかなりデチューンされたものが搭載されていた。これはポッケが885mmという極端に短いホイールベースであり、ホイールサイズも6インチであったため、馬力がありすぎると扱いにくくくなってしまうためと考えられる。実際、3PS仕様のエンジンでもラフにクラッチをつなぐと、ポッケはポンポンフロントが上がってしまったという。

 

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エンジンはミニトレベースの空冷2ストローク単気筒。ミッドナイトはケースやシリンダーなどがブラック仕上げとなる。

 

 また、ミッションに関しても4速のポッケに対して、ミニトレやRX50スペシャルには5速が与えられていた。ギア比で見るとミニトレが1速 3.250/2速 2.000/3速 1.428/4速 1.125/5速 0.961、ポッケが1速 3.250/2速 2.000/3速 1.428/4速 1.125なので、基本的には同じギア比を採用しているが、ポッケは5速ギアが無いという仕様であった。ミニトレ系のエンジンには1980年からC.D.I点火が採用されており、ポッケも当然C.D.I点火方式であった。

 

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スペックは最高出力3PS/5500rpm、最大トルク0.42kgm/4000rpmに抑えられているが、軽量な車体で快活な走行性能を見せる。

 

全長1.3m以下のコンパクトな車体

 「男のリトルバイク」というキャッチフレーズで登場したポッケは、三角形をベースにした安定感のあるスタイリングが特徴的だ。車に積むことや室内で保管するを考慮して折りたたむことのできるハンドルが装備され、6インチとライバル車よりも小径のホイールを採用し、乾燥重量も52kgと非常に軽量に仕立てられていた。

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ポッケ ミッドナイトのヘッドライトボディはブラックで、リムはゴールドメッキ仕上げとなる。

 

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小ぶりなメーターはスピードのみのシングルタイプで、インジケーター類はメーター内に収められている。

 

 ポッケのフレームはスチール製のバックボーンタイプで、スイングアームも同じくスチール製のものが装着される。ホイールベースは先述した通り885mmと非常に短く、全長も1280mmとモンキーよりも60mm短く仕上げられている。非常にコンパクトな車体であるが、跨ってみると大きくアップしたハンドルのおかげで上半身はリラックスしたポジションで、シートも大きめなので下半身も思ったよりも窮屈では無い。

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車に積んだり室内で保管する際、ノブを緩めるとハンドルは折り畳めるようになっている。

 

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小ぶりな三角形のタンクに、大きめのYAMAHAゴールドエンブレムが取り付けられる。タンクの容量は5.3Lだ。

 

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シートも三角形を組み合わせたような形状。座面が広くクッションもあるので、乗り心地は悪く無い。

 

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ポッケ ミッドナイトのゴールド立体エンブレムがサイドカバーにも取り付けられる。

 

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テールランプはシンプルな長方形。シートの後ろにはキャリアが取り付けられている。

 

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マフラーはアップタイプで、車体の右側に出されている。2ストロークなので、オイル混じりの白煙が出るため汚れやすかった。

 

 ポッケ ミッドナイトにはゴールドペイントの6インチホイールや、ゴールドのタンクモール、ゴールドのYAMAHA立体タンクエンブレムなどが与えられている。サスペンションはフロントがテレスコピックタイプフォーク、リアはツインショックタイプと当時としてはコンベンショナルなものを採用、ブレーキは前後ドラムタイプとなる。

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フロントフェンダーはオフロード風のアップタイプで、先端にはゴールドのYAMAHAデカールが貼られている。

 

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ステップやペダルはしっかりとした大きさがあり、確実な操作が可能。エンジンのスタートはキック方式だ。

 

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ファットなタイヤを履く6インチホイール。ミッドナイトはホイールがゴールドにペイントされる。

 

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フロントブレーキはドラム式で、50ccのレジャーバイクにとって必要にして十分な性動力が確保されている。

 

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リアホイールもフロントと同じ6インチで、スイングアームはしっかりとしたスチール製。駆動方式はチェーンとなる。

 

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リアサスペンションはツインショックタイプでかなり長めの設定。リアブレーキもドラム式となる。

 

 ポッケは1983年までしか生産されておらず、生産が中止となってから既に40年という時間が経過している。現在まで生き延びたモンキーとは違い、生産台数も多くはない。しかし、ポッケはバイクが元気であった時代に輝きを見せたモデルであり、その中でもミッドナイトは今となっては非常にレアな1台であると言えるだろう。

POCKE Midnight主要諸元(1981)

・全長×全幅×全高:1280×690×920mm

・ホイールベース:885mm

・シート高:660mm

・乾燥重量:52kg

・エンジン:空冷2ストロークピストンリードバルブ単気筒49cc

・最高出力:3PS/5500rpm

・最大トルク:0.42kgm/4000rpm
・変速機:4段リターン

・燃料タンク容量:5.3L
・ブレーキ:F=ドラム、R=ドラム

・タイヤ:F=3.50-6、R=3.50-6
・価格:11万5000円(当時価格)

撮影協力:バイク王つくば絶版車館

 

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あらゆるジャンルの絶版車が揃うショールーム。カラーリング違いなども数多くストックされ、好みの1台が見つかるはずだ。

 

 住所:茨城県つくばみらい市小絹120
電話:0297-21-8190
営業時間:10:00~19:00
定休日:木曜日

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/430290/

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