AT車(オートマ車)には、シフトノブの位置に“N(ニュートラル)”レンジがある。何気なく見ているNだが、駐車する時はP、通常走行時はDやRにしているだろうから、「確かにいつ使うの?」と思ってしまうが……。
文/山口卓也、写真/写真AC、アイキャッチ画像/vladdeep@Adobe Stock
【画像ギャラリー】Nレンジの正しい使い方、知ってますか?(7枚)画像ギャラリー■ほとんど使うことがないN(ニュートラル)とは?
N(ニュートラル)は英語でNeutralと言い、「中立の」や「中性の」などを表す言葉。
「種類や特徴がはっきりしない」場合にもNeutralという単語を使うことがあり、使い方のはっきりしないNは、ある意味「なるほどな……」と思える表示ではある。
シフトがNの位置にある時、変速機のギヤはエンジン動力と切り離された状態にあり、アクセルを踏んでもエンジン回転が上がるだけで前にも後ろにも進まない状態にある。
前進(D:Drive)も後退(R:Reverse)もしない“中立”の位置にあるのでNを表示するようにしているのだ。
同じように前にも後ろにも進まないシフト位置にP(駐車:Parking)があるが、この時の状態はギヤをロックさせている状態である。
【画像ギャラリー】Nレンジの正しい使い方、知ってますか?(7枚)画像ギャラリー■ほとんど使わないのになぜ存在するのか?
MT車(マニュアル車)では、停止時やシフトチェンジ時に頻繁にNにシフトする。MT車の通常運転時には何度も使うNだが、AT車の通常運転時には「ほとんど使わないのになぜ存在するのか?」と思う人もいるだろう。
だが、エンジンの駆動力がギヤに伝わらないNが必要なシーンはAT車にもあり、大きく2つ。
1.緊急時に使う
クルマが故障し、他車や人力でクルマを動かす場合、エンジン動力と切り離されたNならタイヤは抵抗なく回るため簡単にクルマを動かすことができる。これはMT車もAT車も同様。
これがDだとかなりの抵抗があり、Pでは完全にロックがかかっている状態のため、大勢でクルマを押してもびくともしないだろう。
2.ギヤを保護するため
シフトポジションにはP、R、N、D、L(低速:Low)などがあるが、後退のRと前進のDの間にNがある。このNの位置はトランスミッション内のギヤを保護するためでもある。
RからD、DからRにシフトする時、いったん駆動力を抜いてやらないと大きな負荷がかかりギヤが壊れてしまうことも。
そこで必ずNを通過するようになっているが、RからD、DからRにシフトする時、クルマが完全に止まってからシフトすることは心がけてほしい。
【画像ギャラリー】Nレンジの正しい使い方、知ってますか?(7枚)画像ギャラリー■下り坂でNを使うのは燃費向上に貢献する? しない?
「下り坂でNを使うと燃料消費を抑えられる」と思っている人もいるかもしれない。下り坂ではNにシフトし、重力に任せていればクルマは進むからだ。
しかし、一般的なガソリン車でDにシフトしてアクセルオフにした場合は燃料カットの制御がかかるようになっている。エンジン内にガソリンの噴射がされない状態になるのだ。
いっぽう、Nにシフトしてアクセルオフにした場合は燃料カットが行われず、アイドリングの回転数を維持したまま。
つまり、アイドリング時の燃料噴射量を維持することで燃料消費されるのだ。よって、燃費が向上するどころか、若干ではあるが燃費は悪くなる。
また、エンジンブレーキを使えないことでフットブレーキに頼ることになるが、長い下り坂でフットブレーキのみを多用するとフェード現象やベーパーロック現象が起こり、事故の可能性が飛躍的に高まる。他車を巻き込むことになりかねないので、絶対にやめてほしい。
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