日産のハイブリッドシステムである「e-POWER」とホンダのハイブリッドシステムである「e:HEV」。よく比較される両者だが、どのクルマに搭載するかによっても違ってくるため、どちらがよりいいシステムなのかは、断言が難しいところ。
ではたとえば、日本のコンパクトカーに搭載するならどちらがより適しているのか。ノートe-POWERとフィットe:HEVで徹底比較し、考えてみよう。
文:吉川賢一/写真:HONDA、NISSAN
【画像ギャラリー】どちらがよりいいハイブリッドシステムか!?? 日産「ノートe-POWER」とホンダ「フィットe:HEV」(19枚)画像ギャラリー燃費のよさと、エンジンの滑らかさが魅力のe:HEV
軽自動車とスポーツカー除く、全てのホンダラインアップに採用されているホンダのハイブリッドシステム「e:HEV」は、低速から高速までの全域でモーターによる駆動を行い、高速クルージング時はエンジンのみでも駆動を行う、シリーズパラレル方式のハイブリッドだ。エンジン、発電用モーター、走行用モーター、パワーコントロールユニット、小型バッテリー、そしてエンジン直結クラッチという構成で、高速走行時でもバッテリー残量に余裕があればEVドライブモードになるという特徴がある。
e:HEVの魅力は、効率のよさからくる燃費のよさと、エンジンの滑らかさだ。e:HEVのエンジンは静粛性が高く、低速から高速まで心地よく滑らかに加速し、高速クルーズ走行時のエンジン直結モードでの走行フィーリングも、高速走行中にブーンと唸り続けるe-POWERよりも心象がよい。
また、エレクトリックギアセレクターを備えていることも素晴らしい。アクセルオフ時の減速度を調節出来るので、うまく活用すれば長い下り坂などでスムーズな運転ができ、安心感が高まる。
ただ、フィットやヴェゼルのような小型車では、電動車らしい爽快な加速が感じにくいのは、人によっては「あれ?」と思う点だろう。小型車向けのe:HEVでは、モーターの出力特性に、過度なレスポンスのよさや力強さを追求していないようで、よくできた内燃機関の延長線上に来るようなチューニングがなされている。クルマのキャラクターによって変えているようだが、このあたりがe:HEVの惜しい点だ。
爽快な電動車フィールを味わうことができるe-POWER
ノート/ノートオーラ、キックス、エクストレイル、セレナの5車種に搭載されている日産のハイブリッドシステム「e-POWER」は、ガソリンエンジンは発電専用として使用し、駆動はモーターで行うシリーズハイブリッド方式だ。
エンジンと発電用モーター、駆動用モーター、インバーターと小型のバッテリーという、シンプルな構成が特徴で、エンジンはe-POWER専用に最適化することで高出力と低燃費を両立しており、このエンジンとモーター出力の組み合わせを変えることで、低価格車から上級車までカバーをしている。
e-POWERのメリットは、アクセルペダル操作に対するレスポンスのよさと、低速からの力強い滑らかな加速だ。発進から中低速での走行は、主にバッテリーに蓄えた電力で走行し、高速走行では発電した電力で駆動するとともにバッテリーを充電し、急な加速時に備える。回生ブレーキを活用したワンペダル走行もなめらかで、常時電動車フィーリングを味わうことができる。
ただe-POWERは、ほかのハイブリッドシステムよりも、高速走行時の燃費の落ち込みが大きくなってしまうことに対して、厳しい意見が多い。参考に、ノートe-POWERとフィットe:HEV、またトヨタの「アクア」の燃費データをまとめた。どのハイブリッドシステムも、程度の違いはあれど、高速道路モードは、市街地や郊外シーンよりも燃費が落ちる傾向なのだが、e-POWERがもっとも落ち込みが大きく、この点がe-POWERの弱点としていわれ続けている。
筆者はノートオーラe-POWERに3年ほど乗っているが、一般道を時速30~60㎞で流すような走りならば、カタログ燃費を上回ることはよくあるのだが、高速道を時速100km+αで巡行となると、常にエンジン発電が続くため、燃費はまったく伸びない。また、エアコンONによる電力消費も無視できず、特に真夏や真冬には、エアコンのせいでエンジン発電を促進してしまう。

























コメント
コメントの使い方トヨタは直結どころかモーターとエンジン動力の切換えが無段階制御だし、しかもギヤが2段式になってて死角が無い。
2〜3歩先に行ってる。
発電機専用の原始的な仕組みもエンジン制御の自由度の高さから、一応利点も有る。
とにかく熱効率一点集中型のエンジンにした上で、3段変速にすればかなり良くなる。
三菱,ホンダ共に一段だけでは、いかに直結にしようとギヤ比に無理がある所は共通だからね。
eHEVはパラレル方式なのでEVモードのフィーリングをエンジンでの加減速と同じようにチューニングしている理由も含めてレビューが欲しかったです。EVモードの加減速をePowerなみにしてしまうとエンジンでのフィーリングとのギャップが大きくなり、違和感につながるのではと思います。元エンジニアの観点も見たかったです
当方日産のエンジニアですが、
エンジンに切り替えるパラレル方式の場合、EVモードの加減速のフィーリングをエンジンと極端に変えてしまうとドライバーの違和感になるので加減速をエンジンっぽくチューニングしていると思います。
エンジニアならではの技術的に難しい箇所の工夫もレビューされると良いのかなと思います。
4気筒エンジンと直結クラッチとの組み合わせを成立させる為に薄型モーターを採用するe:HEVは電動パワートレーンならではのフィーリングや加速がやや犠牲になり、EV用のモーターをそのまま搭載するe-POWERはフィーリングや力強さは魅力的だが、エンジンを3気筒としており、VC-T以外は非力なので搭載性以前に直結クラッチがあっても意味を成さない。
非常に興味深いと思います。