スズキの技術について、鈴木直也氏は「ブレなくて一本筋が通っている」と評価する。自社の技術力をアピールするような「映える」技術ではなく、コストをかけずにユーザーの利便性を向上させることを目指すスズキの独自技術を解説する。
※本稿は2025年4月のものです
文:鈴木直也/写真:スズキ ほか
初出:『ベストカー』2025年5月10日号
ユーザーの利便性第一の「いぶし銀の技術」
スズキという会社のキャラからして、キラキラした贅沢な技術には縁がない。
というか、そういう派手な技術とはあえて距離を置き、コストをかけずにユーザーの利便性を向上させるのがスズキ流。既存の技術にひと捻りの工夫を加えることで、安く軽くシンプルで日常の役に立つ技術開発に取り組んでいる、といったイメージがある。
例えば、その典型がAGS(オートギヤシフト)と名付けられた自動化マニュアルトランスミッション。既存の5速MTをベースにクラッチとシフト操作を自動化したこの簡易ATは、初めはインド市場向けとして開発された。
しかし、そこからひと捻りを入れるのがスズキの真骨頂。AGSの出力軸に10kW/3.1kgmのモーターを組み込んで、電動走行も可能な本格ハイブリッドに進化させている。
スズキの電動化戦略は、これ以前から、「できる範囲でなるべく幅広く市販車に適用する」という方針で、この言葉のとおり軽自動車を中心にマイルドハイブリッドを積極採用。
初期は回生充電でオルタネータ負荷を低減する「エネチャージ」だったが、それが1.6kWのスターター・ジェネレータ装備のS-エネチャージに発展。コストに厳しい軽自動車ながら、電動化によるCO2削減に取り組んでいる。
また、自動車のエネルギー効率向上の王道ともいえる軽量化への取り組みもスズキの得意技だ。
アルミやCFRPなど、コストをかければド素人でも軽量化は可能だが、HEARTECTと名付けられたスズキの軽量プラットフォームは、高張力鋼板を効率よく活用したまさにプロの仕事。
2トン超えがザラのEVと比べると「いったいどっちが環境に優しいの?」と言わずにはいられない。
まさに、いぶし銀の技術開発と言いたいですね。
ユーザー目線の技術こそスズキの真骨頂
麻美のアルトとして人気だった2代目アルトに採用された運転席回転機能。外側に60度回転するため女性が脚を揃えて乗り降りできると好評。
それに両側スライドドアを組み合わせたのがスライドスリム。便利と思えば積極採用するのがスズキ流。その技術は現在福祉車両に生かされている。



















コメント
コメントの使い方