少し変わった雰囲気のワゴンR。ユーザーからも販売店からも、変わり者(ワゴンRの代わりという意味もあり)として扱われたのがMRワゴンだった。なぜ車名がMRなのか。元々は駆動方式を表していたという声もある。元のコンセプト通りに完成したら超面白いクルマだったかもしれない、MRワゴンをプレイバックしていこう。
文/佐々木 亘:写真/ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】最終型のMRワゴンもちょービジュ良いじゃん!! 中古で狙うのもありかも??(7枚)画像ギャラリー企画段階ではミッドシップだったクルマ
MRワゴンが登場したのは、2001年のこと。しかし、このクルマの血筋を紐解いていくと、1999年の東京モーターショーへと行き着く。
コンセプトカーとして登場したMRワゴンは後車軸直前にエンジンを搭載したもので、ミッドシップエンジンのクルマだった。さらに駆動輪はリアという「MR」の状態。FFが主流である軽自動車でMRに挑戦し、コンセプトカーまで出してしまうところが、スズキというメーカーの面白さだった。
しかしながら、量産車の発売となるとコストの問題が大きく立ちはだかり、ミッドシップエンジン・リアドライブの形態は諦めざるを得ない状態に。車名のごとくMRの軽ワゴンが生まれたら、超面白い存在になったはずだが、市販化を目の前にしてMRプランは消えてしまったのだ。
ミッドシップじゃなくなったMRの意味
販売モデルでは、フロントエンジン・フロントドライブのFFになったため、車名はMRではなく‘‘FFワゴン’‘になるはずなのだが、そこはMRワゴンのままだった。ではMRにはどのような意味が込められたのだろうか。
答えは「マジカル・リラックス」。なんとも‘‘こじつけ’‘のようにも聞こえるのだが、MRワゴンの実力を見ていくと、確かにマジカル・リラックスだなと感じる部分は多い。
MR思想から生まれているボディは、そもそもエンジンをフロントに載せない前提で設計されているため、他の軽ワゴンに比べてフロントガラスが大きく傾斜していた。そのため軽自動車の中でも、居住空間が最大限に確保されている。
さらにエンジンを小さなスペースへと無理やり押し込める形となったため、当時の2代目ワゴンRと比較して、室内長が100mmも長くなっているのだ。ハコのカタチを作ってしまって後から機能を詰め込むのは、スズキのお家芸とも言える。
100mm長い室内長を生かして、後席はワゴンRよりも90mm後ろにセットされたから、足元スペースはゆったり。後席の左右独立のシートスライドとリクライニングが「マジカル」の由来であろう。
独自のMR構想が、当時爆売れだった2代目ワゴンRよりも広い室内を生み出し、まさに魔法のようなリラックス空間を作り出した。怪我の功名というべきか、スズキの自由な発想力の賜物というべきか。結果オーライでまとめ上げるのがスズキの凄さである。
2代目以降はママと子供のリラックス空間に
初代MRワゴンは2006年にモデルチェンジを迎える。2代目は丸目のヘッドライトが河合らしい、一般的なボンネットのある2BOX軽自動車へと進化した。
ターゲットになったのは子育て世代の母親だ。インテリアには母親のための親切装備が満載だった。
助手席前には2つのコンビニフックを持つフタ付きのインパネボックス、内側に棚を設けた大型グローブボックスに、買い物カゴなどを安定して置ける助手席シートアンダートレイボックス、子供のミルクやおやつを置くための収納式インパネスライドボードなど、豊富な収納が機能的に配置されている。
ミッドシップ改め、マジカル・リラックスのMRは、ママ(M)のためのリラックス(R)空間へと生まれ変わったのだ。
2016年に3代目モデルが終売となり、幕を下ろしたMRワゴン。アイディアのスズキを存分に感じられる、魔法にかけられたクルマであった。
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