毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はホンダ CR-Z(2010-2016)をご紹介します。
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文:伊達軍曹/写真:HONDA
■「ハイブリッドで楽しむ次世代のライトウェイスポーツ」として登場したCR-Z
エコロジー性能とスポーツ性能の両立をうたう「世界初の量産ハイブリッドスポーツカー」として華々しくデビューするも、さまざまな面で「どっちつかず」だったせいで不評に。
そのためマイナーチェンジでスポーツ性能を向上させたが、ほぼ同時期に強力なライバルが現れてしまい、結局は人気薄のまま1代限りで終わった悲運の意欲作。それが、ホンダ CR-Zです。
CR-Zは、まずは2007年の東京モーターショーにコンセプトカーとして出品。そして2009年の同モーターショーで「CR-Zコンセプト2009」という市販版に近いバージョンが発表され、2010年2月に正式発売となりました。
全体のフォルムは往年の軽量スポーツ「ホンダ CR-X」を彷彿とさせるもの。車台は前半部分こそインサイトと共通ですが、それ以降のセクションは新設計されたCR-Z独自のものです。
パワーユニットは、当時のホンダ フィットRSに搭載された1.5L i-VTECに、当時のホンダ インサイトに使われていた「IMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)」というやや簡易的なハイブリッドシステムをかけ合わせたもの。
システム全体で124psの最高出力と17.7kg-mの最大トルクを発生させました(※MT車)。
トランスミッションはパドルシフト付きのCVTに加え、ハイブリッド車としては珍しい6速MTも用意。初期モデルのカタログ燃費はCVTが25.0km/Lで、6MTが22.5km/Lです。
しかし1.5Lエンジンは「スポーツカー」を標榜するにはやや非力で、それに加えてハイブリッド車ゆえの重量増が響いたせいか、「スポーツカーとしてのCR-Z」にはユーザーを納得させるだけの魅力がさほどありませんでした。
そして肝心のハイブリッドシステムも簡易的なものであったため、冒頭で申し上げたとおりの「どっちつかず」な一台になってしまったのです。
そのためホンダは2012年9月のマイナーチェンジでパワーユニットを刷新。
1.5Lエンジンは高回転・高出力型のi-VTECに変更され、バッテリーもニッケル水素電池からリチウムイオン電池に代えて高電圧化。これによりモーター出力も強化されました。
さらに、走行中にボタンを押すと瞬時にV6 3L並みの全開加速が始まるという「PLUS SPORTボタン」も、このタイミングで追加されています。
しかし販売は依然として振るわず、その後も2015年8月の二度目のマイナーチェンジでさまざまな手を打ったのですが、失地回復には至りませんでした。
そのためホンダは2016年にCR-Zの生産を終了。2017年1月には販売も終了となりました。
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