■COTY受賞も…CR-Zの行く手を阻んだCR-Xの幻影、そして「86」の出現
ホンダ CR-Zという意欲作が、人気薄なまま1代限りで終わってしまった理由。
要するにそれは「売れなかったから」であり、売れなかった理由は、「重い」「前期型は非力」「後部座席が極端に狭い」等々、まぁいろいろあったでしょう。筆者も、そこについてはほぼ異論なしです。
しかしそれらに加えて、以下の2つの理由もあったのではいないかと考えています。
ひとつは「CR-Xの幻影」です。
ホンダはCR-Zというハイブリッドスポーツカーを、旧来型のスポーツカーではなく「しなやかに走る新時代のスポーツカー」として位置づけたはずです。
ですがCR-Zのフォルムはどう見てもCR-Xのそれを踏襲していますし、そもそも車名もよく似てますので、ユーザーはどうしても「CR-Xの再来か?」みたいな期待をしてしまいます。
しかし実際に登場した前期型CR-Zの走りは、CR-Xとはずいぶん違うものであったため、ユーザーは「必要以上にがっかりする」という図式になってしまいました。
形も名前もCR-Xとはぜんぜん違う感じにすれば良かったのに……と思いますが、まあここについては後の祭りです。
そしてもうひとつの理由が「トヨタ 86の登場」でしょう。
前期型の失敗(?)を受けてホンダは2012年9月、前段で紹介したとおりのマイナーチェンジを行いました。
それによって、「どっちつかず」だったCR-Zは「スポーツカー」の方向へと明確に振られたわけですが、そのマイナーチェンジのちょっと前、2012年4月に「トヨタ 86」が発売されてしまいました。
そうなると、スポーティな走りを楽しみたい人は、わざわざややこしくて重いハイブリッドシステム(しかも設計が古いIMA)を採用している車より、普通のガソリンエンジンを積んでいる86を買うほうが「話が早い」となるのは当たり前の話です。
その結果、ホンダCR-Zの2012年9月のマイナーチェンジはなかなか良い内容だったと思うのですが、スポーツカーを好む層には刺さらないまま、ほぼスルーされる結果となりました。
このような流れで人気薄車としての生涯を終えたホンダCR-Zに対し、「なら最初から後期型みたいな車を作って売れば良かったじゃないか!」と指摘することもできます。
ですがそれは、2020年の今だからこそ指摘できること。未来を正確に予測するなど神様以外にはできませんし、神様だって怪しいものです。
そのため、2009年頃の時点で「これこそが世界初の量産ハイブリッドスポーツとしてベストなセッティングである!」と判断し、決断した当時のホンダの担当者らを責めるなんて、本当は誰にもできないのです。
■ホンダCR-Z主要諸元
・全長×全幅×全高:4080mm×1740mm×1395mm
・ホイールベース:2435mm
・車重:1130kg
・パワーユニット:直列4気筒SOHC+モーター、1496cc
・エンジン最高出力:114ps/6000rpm
・エンジン最大トルク:14.8kgm/4800rpm
・モーター最高出力:14ps/1500rpm
・モーター最大トルク:8.0kgm/1000rpm
・燃費:22.5km/L(10・15モード)
・価格:249万8000円(2010年式a 6MT)
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