S13シルビアは何が凄かったのか? 当時の若者が熱狂したデートカーの魅力

S13シルビアは何が凄かったのか? 当時の若者が熱狂したデートカーの魅力

 1980年代後半はデートカーという呼び名が生まれるほど、プレリュードなど価格200万円前後の2ドアクーペが当時の若者に絶大な人気を集めた。

 そんな時代に、これまでなかったような流麗なデザインに加え、後輪駆動によるスポーティな走りも併せ持って登場したのがFRライトウェイトスポーツの日産のS13型シルビアだった。

 デートカーとして、そして走りのスポーツモデルとしても若者の支持を集めたS13シルビア。その魅力を振り返っていきたい。

文/斎藤 聡  写真/NISSAN

【画像ギャラリー】’88-’89日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した「アート・フォース・シルビア」を写真でチェック!!


■ナンバー1デートカーの牙城を崩したS13シルビア!

 圧倒的な人気モデルとして君臨していたプレリュードの牙城を崩し、若者たちの心を掴んで一躍スターダムに上り詰めたのがS13型の5代目シルビアでした。

S13型シルビアQs 前期。’88-’89日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞、’88年度グッドデザイン大賞の受賞とメディアからの評価も高かった
S13型シルビアQs 前期。’88-’89日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞、’88年度グッドデザイン大賞の受賞とメディアからの評価も高かった

 「アート・フォース・シルビア」のキャッチフレーズどおり、流麗なボディラインのクーペスタイルは、当時ほかにライバルが見当たらないほどの美しさで、女性ユーザーにも支持されたことが爆発的な人気を博した大きな理由でした。

 インテリアデザインも凝っていて、エクステリアデザインのイメージそのままに曲面を生かしたダッシュボードの造形やスポーティなのにエレガントなハイバックシートなど、デザイン性を重視した仕上がりとなっていました。

S13型シルビアのインパネ。ひと目でS13とわかるシックでシンプルな内装
S13型シルビアのインパネ。ひと目でS13とわかるシックでシンプルな内装

 持っていることの悦びとか、見られることの嬉しさを満たしてくれるクルマでした。

■外観だけではない! 当時の日産の技術がふんだんに盛込まれた

 一方、クルマとしての出来も秀逸といえるものでした。

 当時の日産は901運動活動をやっていて、1990年代に世界一のシャシー性能を実現するという目標を掲げてクルマ作りに力を入れていました。S13シルビアのデビューは1988年。翌1989年にはZ32フェアレディZ、R32スカイラインGT-Rが登場します。

 S13シルビアは901運動の第一弾ともいえるクルマで、高ぶっていた日産のクルマ作りの熱の中から生み出されたクルマでした。

 サスペンション形式も、当時FR車といえばフロントサスはマクファーソンストラット式、リアサスはセミトレーリングアーム式が定番でしたが、S13シルビアはフロントがマクファーソンストラット式、リアはマルチリンク式サスペンション採用。

1990年に登場したスカイラインGT-Rにもシルビアと同じリアマルチリンクサスペンションが採用された
1990年に登場したスカイラインGT-Rにもシルビアと同じリアマルチリンクサスペンションが採用された

 さらにターボモデルである「K’s(ケーズ)」にはオプションで4輪操舵システムのHICASⅡも用意されていました。

 乗り心地もよくて、当時のスポーツモデルというとガチガチな硬いサスペンションが多かったのですが、シルビアは、しなやかでゴツゴツした硬さがなかったのも印象的でした。

 特にリアのマルチリンクサスペンションはFRモデルの課題であったトラクション性能を一段階高めるものでした。もっと具体的に言うと、当時の日産のFR車は粘るけれど後輪の滑り出しがやや唐突な傾向がありました。

 いまにして思うとボディ剛性からくる問題もあったのだと思います。ところがシルビアは、滑り出しが穏やかで、しかも滑り出してからもトラクションが横に逃げず、クルマを斜め前に押し出してくれるので、限界領域のコントロールがとてもやりやすいクルマでした。

 スポーツモデル=男の乗り物といった図式を打ち壊して、だれでも楽しめるスポーツモデルといった仕上がりでした。

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