クルマの基本機能である「走る・曲がる・止まる」のうち、最も重要な「止まる(=ブレーキ)」機能。昨今は、運転支援技術が発達し、前走車にぶつかる前に自動でブレーキが入る衝突被害軽減ブレーキや、前走車との車間を調節して追従してくれるアダプティブクルーズコントロールなど、ブレーキ制御は進化を遂げています。
しかし、ブレーキが効かなくなったことによる事故は、いまでも年間数十件ほど発生しており、いつ自分の身に起きても不思議ではありません。もし、運転中にブレーキが効かなくなったら、あなたはどうしますか。
文:吉川賢一
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故障以外でもブレーキが効かなくなることはある
「ブレーキが効かなくなる」というと、ブレーキ系統の故障や、雨や雪道、アイスバーンなど路面のミューが低い場合を思い浮かべ、「そうそうないでしょ」とか、「自分には関係ない」と、思ってしまうかもしれませんが、ブレーキが効かなくなる現象は、故障や路面ミューによらず、ドライバーの運転方法次第で起こり得ます。長い下り坂を走行中に起こりやすい、「フェード」と「べーパーロック」です。
長い下り坂で、フットブレーキを使いながら減速をし続けると、ブレーキパッドとブレーキディスクが擦れ続けることで、ブレーキパッドに熱が発生します。この熱が許容限度を超えると、摩擦係数が低下し、ブレーキペダルをどれだけ踏んでも減速ができなくなります。この状態が「フェード」です。
そのフェード現象が起きた状態で、さらにフットブレーキを使い続け、パッドとディスクの熱がブレーキフルードにも熱が伝わるようになると、ブレーキフルードが沸騰する現象が起きます。ブレーキフルードの沸騰によって、ブレーキホースの中に気泡が発生すると、いくらブレーキペダルを踏んでも、その力は気泡を潰すことに使われてしまい、制動力が発生しません。この状態を「ベーパーロック」といいます。
フェードやべーパーロックに陥るのを防ぐため、長く続く下り坂では、「セカンドレンジで減速しよう」とか、「エンジンブレーキを併用しよう」という看板が必ず立っています。これは「この場所でそのような状態に陥った人がたくさんいる」ということで、それは、あなたもフットブレーキを使い続ければ、そのような恐ろしい現象に陥ってしまう可能性がある、ということ。長い下り坂では必ずエンジンブレーキを併用してください。
さて、特にべーパーロックの状態に陥ってしまったら、もうフットブレーキに頼ることはできません。ドライバーは、周りに迷惑をかけないため、そして何より自身と同乗者の命を守るため、フットブレーキ以外の方法で、できるだけ安全に止める方法を、責任をもって考える必要があります。ブレーキが効かなくなったら、もしくは効きが甘いと感じたら、まずどうしたらよいでしょうか。
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