2000年から3つのモデルを登場させ、世間の度肝を抜いたトヨタのシリーズがある、そう……「WiLL」シリーズだ。
大手異業種企業の合同プロジェクトを通じて生まれたが、あまりにも奇抜すぎるデザインに、定まらない方向性だったことで販売は低迷。残念ながら、のちの評価では珍(迷)車として数えられることになってしまった。
そんなWiLLシリーズは登場当時、トヨタ関係者すら驚かせたらしい……。WiLLシリーズはなぜ超短命で終わってしまったのか、今回はその背景を追いかけてみたい。
文/清水草一
写真/TOYOTA、ベストカー編集部
■3年しかもたなかった? 意外に3年ももった? WiLLシリーズのトンガリすぎたデザイン
トヨタのWiLLシリーズは2000年の「Vi」から始まり、2001年の「VS」、そして2002年の「サイファ」まで、合計3台がリリースされたが、どれも販売不振で、Viが約2年、VSとサイファが約3年で生産を終えた。
「えっ、そんなに作ってたの? もっと一瞬で消えたかと思った」
そのように感じる人も少なくないだろう。もともと売れ行きがよくなかった上に、年を追うごとに販売が落ち込んだから、もっとはるかに短命だったイメージになっている。
WiLLシリーズは、日本の有名大手企業数社による異業種合同プロジェクトで、20代から30代を中心とする「ニュージェネレーション層」に響く製品を各社が開発し、それに「WiLL」という統一のブランド名とロゴマークを付けて販売するというものだった。
参加したのは、トヨタの他に花王、アサヒビール、パナソニック、近畿日本ツーリスト、コクヨ、江崎グリコである。
しかし、トヨタのWiLLシリーズを除いて、記憶に残っているものがあるだろうか? 私はない。覚えているどころか、当時、見聞きする機会すらまったくなかった。つまり、それだけトヨタのWiLLシリーズは突出しており、強烈な存在だった。
当時、WiLLシリーズを目の当たりにした我々自動車メディア関係者は、誰もが「なんだこりゃ?」と思った。本音を言えば、トヨタの社員の多くも、そう感じていたらしい。
トヨタによれば、Viはカボチャの馬車。VSはステルス戦闘機、そしてサイファは、ディスプレイ一体型ヘルメットをイメージしたという。
なんとなく、トヨタ上層部の意図は理解できないでもなかった。まるでトヨタらしくない、若々しいフレッシュなデザインのクルマをテスト的に製品化して、社に新風を吹き込もう! ということかなと感じた。
カタブツな社風のカタブツな社員たちに、「とにかく跳んで見ろ!」と尻を叩き、無理やり跳ばせたのだろう。
いや、もちろん担当した社員たちは、「我々はやりたいようにやったんです!」と言うが、なにせそれまでの仕事と正反対の方向性だったので、慣れてないシロウトの作品のようになってしまったのだ。
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