昨今の新型車の多くには、USBポートやスマートフォンのワイヤレス充電が装備されている。車内でスマートフォンやタブレット等を充電する際は、多くの人がそれらを使用して充電していることだろう。また昨今はハイブリッド車やバッテリーEV(以下BEV)において、100V電源が用意されているモデルもあり、車内での電源確保については、かなり便利になってきている。
しかし、複数のUSBポートと100V電源ソケットがあるモデルでも、12ボルトのアクセサリーソケットはしっかりと用意されている。最新モデルも例外ではなく、最新モデルでかつバッテリーEVという、時代の最先端をいく、スバル「ソルテラ」/トヨタ「bZ4X」にも装備されていた。ソルテラ/bZ4Xにも、USBポートはもちろん、100V電源も装備されている。なぜアクセサリーソケットは、いまだに廃止されていないのだろうか。
文:吉川賢一
アイキャッチ写真:Adobe Stock_chihana
写真:TOYOTA、SUBARU
近年は前席のみならず、2列目3列目にもUSB充電口が
ご存じの通り、12ボルトアクセサリーソケットはかつて、タバコに火をつけるための「シガーソケット」として、車載の12ボルトバッテリー(トラックなど大型車は24ボルト)を活用した5~10A(アンペア)の直流電流によって、電熱線を熱くしてタバコに火をつける、という装備だった。2000年代に入る前ごろにシガーソケットが消滅したあとは、12ボルト電源を利用できるアクセサリーソケットとして、ほとんどのクルマに標準搭載されてきた。
USBソケットが複数装備されていなかったひと昔前ほどのクルマでは、専用ケーブルを購入して、アクセサリーソケットでスマートフォンを充電していたものだったが、近年は前席のみならず、2列目や(ミニバンなどでは)3列目にも、左右にきちんとUSB充電口が用意されている。アクセサリーソケットを「何に使うのかわからない」という人も少なくないと思われるが、なぜ廃止とならないのだろうか。
USBでは電力不足で電化製品が使えない
その理由は、対応するグッズが多いから、だと思われる。レーダー探知機やポータブルナビ、小型扇風機、GPS車両管理システム、ドリンクヒーター/クーラー、アロマディフューザーといった車載グッズや、インパクトレンチ、小型エアコンプレッサー、電動ジャッキといった大型グッズまで、使わない人は使わないかもしれないが、使う人にとっては、これらのグッズを使うことができるアクセサリーソケットは非常に便利な存在。コストもそれほどかからずに装備できることから、たとえ100V電源のあるモデルであっても、つけられるのであればつけておいた方がいい、ということなのだろう。
USBではこのアクセサリーソケットの代わりになることはできない。USBは、電圧は5Vの設定であり、パソコンやその周辺機器(マウス、キーボードなど)へのデータ通信や電源供給が主な役割だ。そのため、消費電力が大きな家電には対応していない。USB給電にも、USB2.0、USB3.0、USB3.1、USB3.2(Type-C)、USB4(Type-C)といったように、進化の過程で複数の段階に分かれており、その違いは、データ転送速度と、供給可能な電力(電流値)にある。
電流値は、2000年ごろに登場したUSB2.0が最大0.5A(アンペア)、2008~2013年ごろに登場したUSB3.0、USB3.1では最大電流0.9A、2017年のUSB3.2で初めてType-Cコードとなり最大電流は1.5A、2019年に登場したUSB4.0では最大電流3Aにまで上昇している。しかし、3Aまで給電できたとしても、最大15W(5V×3A=最大15W)の機材までしか使用ができない。つまり、アクセサリーソケットが供給できる電力(10A×12V=最大120W)には足りていないのだ。
この先、USBがさらに進化をして、より高い電源供給が可能となったとしても、高い消費電力の電化製品へ、USB口から給電するのはリスクも高い(既存の通電ケーブルは溶損するため、ユーザーが間違って使用させないように、専用ケーブルとセットとなるはず)。最新のUSB PD対応のUSB‐Type‐Cであれば、最大100W(20V、5A)まで対応可能になるというが、自動車メーカーとしても、火災の原因となるような不安要素は、つくりたくもないだろう。
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