普通なら電車で行くような場所同士を結ぶ路線バス。なぜそこにバスが通っているのか……そのワケを知るなら乗りバスが最短だ。
文・写真:中山修一
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■神奈中バス「湘11」系統が走るのは?
今回注目するのは、神奈中バスが運行する「湘11」系統。神奈川県内のうち、いわゆる湘南エリアをカバーする路線の一つだ。
この系統は、小田急線、相鉄線、横浜市営地下鉄の3路線が乗り入れる要衝・湘南台駅から、JR東海道本線と相模線の茅ケ崎駅までの約11kmを結んでいる。
湘南台〜茅ヶ崎なら電車で行くのがごく当たり前で、わざわざそこに路線バスを設定する必要がなさそうに思えるが、経路をチェックするとバスを走らせる目的がちょっと分かる。
電車で湘南台から茅ケ崎を目指した経路を地図で見ると、逆L字を描いて進む。これに対して湘11系統は、逆Lの上端と左端の間に、斜めに線を引いたような経路を辿る。
湘11系統を全区間通しで利用すると43分かかる。電車の場合、藤沢駅で乗り換えが1回必要となり、きれいに繋がれば24分程度で湘南台から茅ヶ崎まで行ける。
距離にするとバスのほうが4kmくらい短く、一応ショートカットルートになっているものの、所要時間で比較すると電車には到底敵わない。
ただし、通し利用ではなく途中の停留所から乗車すると状況が変わる。湘11系統が通るエリアは鉄道の空白地帯で、近くに駅がない。
一旦駅まで向かう所要時間と電車の待ち時間、乗り換え時間を加味した場合、湘11系統のほうが時短になるはずで、乗り換え不要というアドバンテージも得られる。
電車が通らない地域にも商業施設や民家が建ち並ぶのはごく一般的で、そういった場所の公共の足を確保するのが、湘11系統の主な役割と言える。
■乗りバスで確かめてみると?!
湘南台駅では、小田急線の線路を挟んで西口と東口の2箇所にバスターミナルが分かれている。西口ターミナルの6番乗り場が湘11系統の乗車ポイントだ。大体1時間に1本と、やや本数は少なめ。当日はお昼に出発する便に乗車した。
距離が伸びるにつれて運賃が上がる後払い方式で、後ろ(中)のドアから乗り前ドアから降車する。始発の時点で7人ほどの利用者があった。
湘11系統には普通の大型路線車が使われるが、慶應大学へのアクセス路線に充当されている大型連接バスが湘南台駅西口バスターミナルに乗り入れる関係で、乗車中にすれ違いを見て楽しめる。
湘南台駅西口を出発すると、倉庫街や大手スーパー等を経て、緑と人工物がほどよく混ざった住宅街を通っていき、終点の茅ヶ崎駅まで同様の景色が続く。
車窓から見える景観ベースで表現するなら、平和なマチの路線バスといった感じがする。茅ヶ崎駅の少し手前で、JR相模線の踏切を渡るのが大きな見どころだ。
始めは数名だった利用者も、バスが進むにつれてだんだんと増えていき、茅ヶ崎駅へ着くころには結構な盛況ぶり。やはり途中からの乗車が、このバスのフォーマルな使い方なのかも。
通し利用時の運賃は410円。電車ではIC利用で398円なので、バスのほうが少し高い。時間がかかり割高ながらも、直行できる快適さでは断然バスが強い。