2019年3月期決算でなんと日本企業初の売上30兆円(!)を達成したトヨタ。その規模感たるや庶民の想像を越え、もはやイメージも付かないが、“一強”といえるほどトヨタの存在が圧倒的なのは明らかだろう。
だが、しかし……「たくさんの自動車会社がありますが、各ブランドは差別化されていて、それぞれのお客様がいらっしゃる」と、豊田章男社長が件の決算会見で述べたとおり、それでもトヨタが真似できない国産モデルがあることこそ、自動車の奥行きの深さ。
本稿では、そんなトヨタにはない魅力を持つ他メーカーの傑作車を、自動車ジャーナリスト各氏が3台ずつピックアップ。どれも日本車の“幅”を広げている個性派揃いだ。
文:松田秀士、渡辺陽一郎、清水草一
写真:編集部
ベストカー 2019年5月10日号
CX-8は「マツダだから実現できた上質3列車」
■松田秀士が選ぶ傑作3台
・マツダ CX-8(ディーゼル)
・スバル WRX STI
・マツダ アクセラ(MT車)
実質的用途ではアルファード/ヴェルファイアともカブる、マツダ CX-8。最大7人乗りだしね。北米ではこの上級車となるCX-9が人気者。
そこでCX-8はCX-5をベースに成長させたのではなくて、このCX-9からプラットフォームもサスペンションもリサイズして製造している。だから、室内環境だけでなく走りのすべてにおいて余裕がある。
アルファード/ヴェルファイアは、サスペンションのストローク(伸び縮み)そのものを、まず乗り心地に、そしてわかりやすいコーナリング(ロール)姿勢に使っている。
が、CX-8はある程度締め上げたサスペンションで、乗り心地をしっかり押さえながらも運動性能(ハンドリング)に主体を置く。
もし、トヨタでこのジャンルの車を企画するとしたら、スライドドアを採用するアルファード/ヴェルファイアがベースではできない。
他方、ハリアーを成長させるとすると、クオリティでCX-8にはかなわないだろう。さらに、経済的なディーゼルエンジンがあることも魅力だ。
WRX STI、シンメトリカルフルタイムAWDといった機構をトヨタは作る気ないだろう。適当な縦置きエンジンのプラットフォームもないし。
アクセラのMT車にはACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)+LKA(レーン・キープ・アシスト)が装備されている。カローラスポーツのMT車はACCのみです。トヨタはMTモデルに対し、ここまで親切に作りきれない。
【松田秀士】
「トヨタにない4WDターボワゴンの傑作」レヴォーグ
■渡辺陽一郎が選ぶ傑作3台
・スバル レヴォーグ
・ホンダ ジェイド
・三菱 i-MiEV
欧州を除くとワゴンの売れゆきが下がり、トヨタも車種の数を減らしている。設計の新しいワゴンは、欧州にカローラツーリングスポーツが用意される程度。
大半のワゴンは生産を終えて、同程度の荷室を備えるSUVに移行。世界的にワゴンは不人気だからトヨタは開発しない。
その意味でスバルのレヴォーグは注目される。本格的なミドルサイズワゴンで、エンジンはターボを装着した1.6Lと2Lが用意される。
駆動方式は4WDだ。2Lターボエンジンは走行性能が際立って高く、4名乗車の快適な居住性、充分に広い荷室、スバルらしい運転の楽しさと安心感を高い水準で両立させたモデル。
トヨタも技術的にはレヴォーグのようなワゴンを開発できるが、好調に売り続けて儲けるのは難しい。それゆえに開発しない。レヴォーグはスバルだから可能な、トヨタには見られない傑作車だ。
というワゴンの宿命ゆえ、ホンダ ジェイドのようなワゴン風の3列シートミニバンも開発しない。走りはよくても売れないからだ。
三菱 i-MiEVも注目の一台。EVは街中の短距離移動が得意で、セカンドカーの用途にも適する。なので、ボディは小さく抑えてほしい。
この期待に応えているのはi-MiEVだけ。ハイブリッドが中心のトヨタが作ることはないだろう。
【渡辺陽一郎】
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