コンプライアンスに対する意識が高くなっている昨今ですが、クルマに関しては、守られていないルールがまだまだ多いように思います。クルマの運転で守らなければならないのは、信号や最高速度、一時停止などだけではありません。「知らなかった」や「みんなやっているし」では済まされない、よく見かける法令違反を振り返ります。
文:エムスリープロダクション
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ガソリンスタンドでエンジンかけたままで給油
セルフサービスのガソリンスタンドで、クルマを停止させたあと、エンジンを止めることなくクルマから降り、給油を始める――。何気なくやってしまいがちな行為ですが、これは、消防法に基づく危険物の規制に関する政令(取扱いの基準)第27条6の1において「自動車等に給油するときは、自動車等の原動機を停止させること。」と定められていることに違反する行為です。
ガソリンは、低温でも蒸発しやすく、引火点もマイナス40度と非常に着火しやすい物質です。給油口のキャップを開ければ、気化したガソリンが周辺に浮遊し、濃度が一定程度に達すれば着火してしまうおそれがあります。近年は、気化したガソリンが給油口などから漏れることを抑える対策も施されていますが、万が一着火してしまえば大事故に繋がってしまいます。
セルフサービスで気軽に給油できるガソリンですが、危険物であるということは絶対に忘れてはならず、安全に給油するため、エンジンを止めたうえで、静電気除去パットに触れてから給油を開始する、という手順はしっかりと守らなければなりません。
救急車両に譲らない
救急車を含む、緊急車両に道を譲るのは「マナーの範囲」だと思っている人は多いようですが、緊急走行中の緊急車両に道を譲るのは、道路交通法で定められているドライバーの義務。道を譲らない(=走行を妨害)すれば、緊急車等妨害違反(緊急走行中の緊急車両が自車に近づいているのにも関わらず、そのまま走行を続ける違反行為)、もしくは本線車道緊急車妨害違反(緊急走行中の緊急車両が、一般道や高速道路などで、本線車道に車線変更するときや、本線車道に合流するときに進行を妨害する違反行為)となり、違反したとされれば、どちらも反則金は普通車で6000円、交通違反点数は1点が科されます。
「緊急車両」に該当するものは、道路交通法第39条第1項において定められており、具体的には、救急車やパトカー、消防車のほか、JAFやハイウェイパトロール、電気やガスといったインフラ系の緊急作業車、自衛隊、日本赤十字社の血液運搬車、国土交通省の災害本部車や地方公共団体が所有する車両、など。いずれも緊急走行中、つまり、赤色の警光灯が点灯しているときには、道を譲らなければなりません。
適切に車間距離をとらない
街中を走行していると、前のクルマをあおっているかのように、車間距離を詰めて走行しているクルマをみかけることがあります。それらが本当にあおっているのか、そんなつもりはないのかは定かではありませんが、ただ、ドライバーのなかには、もともと車間距離をあまりとらないで走行することが癖になってしまっている人もいるようです。なかには「割り込まれたくない」という考えから、できるだけ前走車との間隔を詰める、というドライバーも。
しかしながら、適切な車間距離をとらないことは、「前走車が急に停止したときにおいても追突するのを避けることができるため必要な距離を保たなければならない」と定める道路交通法第26条に違反する行為。車間距離不保持はまた、2020年6月に施行された改正道路交通法によって創設された妨害運転(あおり運転)の罰則の対象となる10類型にも含まれているため、場合によっては厳しい取り締まりの対象となる行為でもあります。
「適切な車間距離」に関しては、時速と同じ数字(m)が必要といわれています(路面が乾燥していてタイヤがすり減ったり劣化していない場合)。時速40キロなら40メートル、時速100キロであれば100メートルですが、それを測るのは難しいという場合、「時間で測る」という方法があります。JAFが紹介している方法ですが、やり方は、基準とする地点を決め、前走するクルマがその基準地点を通過してから、自車がその地点に到達するまでの時間を数えることで、車間距離を測ります。
時速100キロの場合は、3秒でその距離が83.3メートルとなり、4秒で111メートルとなるため、3秒から4秒以上は車間距離を確保しておきたいところ。ちなみに時間を数えるときは、「ゼロイチ、ゼロニ、ゼロサン」という具合に、「ゼロ」をつけるといいそう。運転しながら時間を数えるとどうしても早くなってしまうため、「ゼロ」をつけることで、より正確に数えることができるそうです。
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