皆さんは「ひょう(雹)害車」をご存じだろうか。
直径5mm以上の氷の粒が大きくなった氷の塊、「ひょう」。2019年5月4日に関東甲信越地方の広い範囲で降ったことも記憶に新しいが、大きなものではピンポン球ぐらいになる場合もあり、車のボディが凹むことも少なくない。
不運にもひょうによって損傷を受けた中古車・新車のひょう害車が、実は相当数流通しており、ボディの凹みと引き換えに安価に入手できるケースもある。
機械的には問題がないことを考えれば、悪くない選択肢とも思えるひょう害車は「買い」なのか? そして、実際にどれほど安く買えるのか?
ひょうは5月~6月、そして10月など春や秋に降ることが多いといわれている。そこで、気になる実態を専門家に聞いた。
文:萩原文博
写真:Adobe Stock
急にひょうが降ってきたら…対処法とひょう害車の定義
ひょうは直径5mm以上の氷の塊だ。したがって我々が想像している以上に硬いモノが空から降ってくるのだ。JAF(日本自動車連盟)は、突然ひょうが降ってきた場合の対処法を以下のように紹介している。
まず、運転中にひょうが降ってきた場合は、なるべく早く頑丈な屋内駐車場に避難することを奨めている。それは激しく降るひょうによってボディが傷付く可能性があるからだ。
そして、自宅の屋根のない駐車場に停車している時にひょうが降ってきたときは、厚手のもう具や布団でボディを覆うことを奨めている。
その他、ひょうが詰まることで道路の排水が間に合わなくなり、道路の冠水にも要注意とひょうの恐ろしさを説明してくれている。それだけ、ひょうによる車への被害は大きいということなのだ。
ひょう害車というのは、新車のケースは完成し、出荷を工場のモータープールで待っている時に運悪くひょうに降られて、ボディに凹みができるなどのダメージを負ったもの。
中古車の場合は、展示中などにひょうに降られてボディが凹むなどのダメージを負ったクルマのことを指す。
ひょう害車の多くは、ボンネットやルーフ、トランクなど外装部ひょうが当たったことによって凹みができてしまった車で、走行性能にはほとんど影響はない。
ただし、ひょうによって冠水した道路を走行して水没した車のことはひょう害車とは言わないのだ。
ボディに凹みがあるものの、走行性能に問題がないひょう害車。一体買いなのかそれともパスなのか。その点を検証してみたい。
なぜへこんだボディで販売? ひょう害車の価格と実態
多くの人は「ボンネットやトランクの凹みならば、きれいに直せばいいじゃない!」と思うかもしれない。たしかに、ボンネットやトランク、ドアならば直せば良いだろう。
しかし、ひょう害を最も受けやすく問題なのは「天井」なのだ。天井は外して修理すると修復歴車となってしまい、売却する時の査定額がグーンと下がってしまうのだ。
外さずに治す方法として鈑金やパテ埋めなどが挙げられるが、鈑金はもの凄い作業になるらしく、工賃に見合わない。そして、「パテ埋め」は数年後に浮いてくる可能性が高いと専門家は話してくれた。
結局、ひょう害車はボディが凹んだまま乗るのがベストということで、どんな人にオススメかといえば、凹んだボディを気にしない人というのが答となる。
最も気になるのはひょう害車の価格だ。ひょう害車は店頭やオートオークションなどにボディが凹んだ現状のまま販売される。
それは先ほども書いたとおり治すと「修復歴有」となってしまうし、採算が取れないケースが多いからだ。だいたい価格の目安は新車で30万円くらい。中古車だと20万円くらい相場より安くなるという。
専門家に話を聞いたところ、
「中古車のセリを行うオークションだと、ひょう害車でもコンディションを点数化する評価点は3が付きます。同じ車種、同じ年式、同じ走行距離だとしてもひょう害車の場合、車種によって異なりますが、だいたい20万円くらいは安くなりますね。
天井などの凹んだ部分にサビがでないように塗装しておけば、ボディへの影響も食い止められます。そもそも駆動系にはまったく問題がないわけですから、見た目を気にしないという人にはオススメかもしれませんね。ただ、そのひょう害のレベルにもよると思います」
と話してくれた。ひょう害車といっても新車が半額で手に入るわけではないようだ。
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ボディに凹みはあるものの、駆動系はしっかりとしているので、良いモノを安く買いたい! 見た目はまったく気にしない! という人にはひょう害車はオススメできる。
やはり、車の場合は「安いには何らかの理由がある」ことは覚えておいてほしい。
もし、相場よりも安いにも関わらずコンディションが良い中古車があったら、ひょう害車かもしれないので、天井もしっかりと見て触ってチェックしてもらいたい。
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