1990年に登場した国産初のスーパースポーツとされるホンダNSXは世界にどのような影響を与えたのだろうか? スポーツカーに新たなトレンドを作ったトレンドメーカーとしてのNSXを振り返ってみよう。
文/西川昇吾、写真/HONDA、Ferrari
■快適なスポーツカー「ホンダ初代NSX」登場
1990年に登場したNSX。量産車世界初のオールアルミモノコックボディを採用し、当時としては高性能なリッター当たり100PSに届きそうな自然吸気で高性能な高回転エンジンを搭載していた。
国産スポーツカーとしてはもちろん、世界のスポーツカーとも肩を並べる性能を持っていたわけだが、NSXが革新的だった最大のポイントは世界初のアルミボディや高性能なエンジンではない。
スポーツカーとしての高性能を持ちながら、ドライバーにとって優しいクルマだったのだ。
それまでのスポーツカーと言えばスパルタンでピーキーで操作が難しくて…そんな「初心者お断り」なモデルが多かった。
しかしNSXは違った。ドライバーにとっての乗りやすいクルマを目指して開発された。それはドライバビリティだけではなく、車内環境も同じであった。
当時新開発のフルオートエアコンにパワーウインドウ、クルーズコントロール、BOSEサウンドシステムなどなど快適&豪華装備がてんこ盛りだったのだ。
しかも価格は800万円から、当時の日本車としては高額であったが、世界のスポーツカーたちと比べると破格であったのだ。この快適で高性能でリーズナブルなスポーツカーに世界の自動車メーカーは驚愕した。
■世界のスポーツカーメーカーが影響を受けた理由とは
この「高性能かつ快適なスーパースポーツ」という過去のイメージから相反する性能の両立は、世界のスポーツカーメーカーに衝撃を与えたのだ。
NSXの登場から、それぞれのスポーツカーメーカーが各々のモデルの装備を豪華に、乗り心地も快適にと進化をさせていく。こうして普段使いできるスポーツカーが世界中に増えていったのだ。
反対に硬派でスパルタンなモデルは、特別なモデルへとコンセプトを変え、新たな価値観を提供するようになった。
NSXで言えばNSX-Rがそれに当たり、ポルシェで言えばGT3などだ。本来スポーツカーとはこういうものだという意見もあるかもしれないが、NSXの登場によって世界のスポーツカーの間口は広がった。
それはスポーツカービジネスの拡大を意味する。スポーツカービジネスが拡大したからこそスパルタンなモデルを始め、様々な魅力的なモデルが登場した。
1990年代から今日に至るまで、様々なスポーツカーが登場したのは、NSXの功績があるからこそ、という面もあるだろう。
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