先日メルセデスベンツが掲げていた2030年までの完全EV化を撤回し、2030年代もハイブリッド車などエンジンを搭載した電動車も販売するという事が発表された。それと同時に、新しいエンジンも開発していると言及した。今までEVシフトを率先していたヨーロッパメーカーだが、ここに来てまさかの方針転換で今後EVシフトの流れはどう変わっていくのか?
文/西川昇吾、写真:MERCEDES‐BENZ
■電気自動車を約束していた訳ではない
最初に言っておきたいのだが、メルセデスベンツはBEVを中心としたEV化に完全なる約束をしていた訳ではない。
メルセデスが完全電気自動車化と騒がれたのは2021年7月の発表だ。このプレスリリースには「2025年以降、新たに販売されるアーキテクチャは全て電気自動車専用となる」と記されていたが、この触れ込みが騒ぎのキッカケになったといえるだろう。
しかし、プレスリリースにはこのようにも記されていたのだ。「メルセデスベンツは市場の状況が許せば10年後の終わりには全てを電気自動車にする準備を整えている」(中略)と英語で記載されていた。
「market conditions allow」という部分が市場の状況が許せば…にあたるのであるが、この部分が一般メディアではあまり取り上げられず、メルセデスベンツは完全に電気自動車へとシフトしたと話題になったと言える。
■2年後の答え合わせ
約2年が経過したところで、先日メルセデスベンツが2023年の業績を発表した。
その発表の中には「メルセデスベンツは電動化に必要なステップを柔軟に進めていく、変革のペースを決めるのは顧客と市場の状況による、完全なる電動ドライブトレインから内燃エンジンを搭載した電動車まで、2030年代に入るまで様々な顧客ニーズに対応できる体制を整えていく予定」(中略)とあった。
約2年前の発表にあった全てを電気自動車専用とする方向からの転換が発表された訳だが、この2年間でメルセデスベンツは市場の状況が許していないと判断したとの見方も出来る。
■さすがは自動車の二大巨頭だ
ただ、長年に渡る内燃機関の開発と、新型Eクラスにあったようにプラグインハイブリッドもラインアップし、幅広いBEVを展開しているメルセデスベンツだからこそ、このような市場と顧客に合わせた柔軟な対応が出来るのだ。
トヨタの全方位戦略がカーボンニュートラルへの対応として話題となることが多いが、メルセデスもそれが出来る体勢が整っているとも言える。
またメルセデスはヨーロッパの次なる排ガス規制であるユーロ7に対応する4気筒エンジンを新規に開発しているとされている。このエンジンは2026年に販売予定だ。
ヨーロッパを中心に年々排ガス規制など内燃機関に厳しい規制となっていて、法規対応が求められている訳だが、今回のメルセデスの2年後の答え合わせを見てみると完全なるEVシフトは市場や状況が望んでいなく実状と合っていないように見える。
自動車メーカーの取り組みも重要であるが、自動車に関連したカーボンニュートラルへの取り組みは政治や行政も各国で柔軟に対応するべきと言えるだろう。
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