一般的にマイナーチェンジというと、エクステリアデザインをちょこっと変えてお茶を濁すことが多い。なかには、言われないと気づかないほど変更がわずかな場合も。一方で、販売不振やデザイン不評などの理由から、大きくテコ入れするモデルもある。今回は、そんな思い切ったイメチェンで成功したクルマたちを紹介しよう。
文/木内一行、写真/トヨタ、スバル、日産、ホンダ
【画像ギャラリー】大規模な改良が奏功したクルマとは?(15枚)画像ギャラリー■タレ目からツリ目で再起を狙ったFRスポーツ 【日産・シルビア(6代目)】
流麗で美しいスタイリングが女性にウケ、デートカーとして一世を風靡したS13シルビア。
また、FRレイアウトのターボエンジン搭載車ということで、走り好きからも絶大な人気を得ていたことはご存じのとおり。しかし、1992年にS14へ移行すると、残念ながらその勢いを持続することはできなかった。
その原因のひとつが、拡大したボディサイズと増加した車両重量。もともとS13は、コンパクトなFRスポーツというAE86の後釜的なポジションだったため、S14はボディ拡大と重量増がネックとなり、ユーザーから敬遠されたのである。
そして、不評を買ったもうひとつの要素がデザイン。前期のフロントマスクは、曲面のボディを強調させるタレ目のような雰囲気。スポーツカーらしいどころか、優しささえ感じてしまうほど穏やかな表情だった。
そこで日産は、1996年のマイナーチェンジで前後のデザインを一新。特にフロントマスクは、薄型でシャープな形状のライトでツリ目っぽい表情に変更。一気にスポーツカー然としたルックスになり、人気も高まったのである。
ちなみに、当時は後期のほうが圧倒的に人気だったが、現在では前期を推す声も少なくない。
■賛否あった奇抜な顔も今見ると悪くない!? 【ホンダ・インテグラ(3代目)】
クルマのフロントマスクを何かに例えることはよくあること。1993年にモデルチェンジした3代目インテグラは、さながら深海魚といったところ。
「100mアイ・キャッチ」をエクステリアのテーマとしてデザインされたインテグラ。
遠くからひと目で違いを感じさせる存在感のあるスタイリングを追求したそうだが、それが最も表れているのがフロントマスクだ。バンパーに埋め込まれた独立丸形4灯ヘッドライトは超個性的で、ひと目でインテグラとわかるもの。この顔を一度見たら、そうそう忘れることはないだろう。良くも悪くも、人々に強烈な印象を与えるデザインである。
しかし、この斬新すぎるルックスが日本で受け入れられることはなかった。そして1995年のマイナーチェンジでは、横長の薄型異形ヘッドライトを採用してフロントグリルも装備。マルチリフレクターの透明感や奥行き感も手伝い、洗練されたスマートなフロントマスクに生まれ変わったのだ。
さらに、マイナーチェンジと同時に追加されたタイプRの影響もあり、インテグラの株は急上昇。今では後期のイメージの方が強いほど。
個人的に、前期マスクはアルファGTVやパガーニ・ゾンタのようで嫌いではないのだが……。
■二度にわたるフェイスリフトで人気をキープ 【スバル・インプレッサ(2代目)】
丸目、涙目、鷹目。これだけ聞いても何が何だかわからないだろうが、実はどれも2代目インプレッサの愛称。
2000年に登場した2代目インプレッサは、初代と同じようにセダンとスポーツワゴンをラインナップ。セダンは走りを重視し、ワゴンは居住スペースの確保を目指すなど、それぞれに専用のパッケージングが与えられた。
その一方で、フロントマスクは共通デザイン。ウインカーとポジションランプ内蔵の丸形ヘッドライトを採用したその姿は、かなり個性的である。
ただ、独創的すぎてユーザーに受け入れられなかったため、2002年には大規模なマイナーチェンジを敢行。不評だったフロント周りのデザインを刷新するべく、大型の異形ヘッドライトを採用。リアコンビランプと一体感のある意匠となった。
そして、ヘッドライトの形状からこの中期モデルは「涙目」、前期は「丸目」と呼ばれるようになったのである。
このマイナーチェンジによって印象は大きく変わり、ユーザーからの評価も上昇。しかしスバルはさらなる手を打つ。
2005年のマイナーチェンジで再びフロントマスクを一新。航空機の翼のデザインをモチーフにし、スバルのデザインアイデンティティを表現した「スプレッドウイングスグリル」を採用するとともに、ヘッドライトもシャープな印象を与える形状に変更。
この後期モデルは見た目から「鷹目」と呼ばれ、2代目のなかでも高い人気を誇っている。
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