インパルス400は、1980年代から続く「インパルス」の名前を受け継いだ現時点では最後のバイクだ。スズキのレジェンドバイクGS1000のイメージを受け継ぎつつ、幅広いライダーの要求に応えたえる性能とキャラクターを持ち、ネイキッドバイクブームを戦い抜いた名車である。
スズキとヨシムラのジョイントから生まれた初代インパルス
スズキの二輪車の歴史の中に、「インパルス」という名前は3回登場している。最初にインパルスと名付けられたのは1982年に登場した「インパルスGSX400FS」(※「GSX400FSインパルス」とも呼ばれるが、ここではスズキの社内呼称を使用)だ。
1980年からスズキはヨシムラとのジョイントを正式に開始し、GS1000Rにウエス・クーリーとグレアム・クロスビーを乗せ、「8耐」こと鈴鹿8時間耐久オートバイレースに勝利した。赤と黒のヨシムラカラーは当時のバイクレースブームを象徴するカラーとなり、GSX400F/F IIにこのヨシムラカラーを纏わせ、ヨシムラと共同開発した集合タイプのマフラーを装着した初代インパルスが発売された。最初から集合管が装着されていたこともあり、レースファンのみならず、走り屋やヤンチャ系のライダーにまで幅広くインパルスは受け入れられた。
2代目インパルスは、ハンス・ムートが手がけた超個性的モデル
次にインパルスの名前が与えられたのは、1986年に発売されたGSX-400Xインパルスだ。この2代目インパルスは、GSX1100Sカタナをデザインしたハンス・ムートがデザインを手がけたことで大きな話題になった。「東京タワー」や「六本木」といったキーワードからデザインされたこのバイクは、GSX-R400と同じ水空油冷方式「SATCS」(Suzuki Advanced Three-way Cooling System)を採用したエンジンを、最大の特徴とも言えるスチール製のダブルクレードルフレームに搭載していた。
このフレームはヘッドライトステーが一体になっており、ヘッドライトステー部分にトラスデザインが採用されていた。メインカラーであったブラックにはオレンジ色のフレームとシートが与えられており、ヘッドライトステー部分のトラスデザインと合わさって東京タワーのようであった。デザイナーであるハンス・ムートもこれは意図していたことであり、2代目インパルスは「東京タワー」という愛称で呼ばれることとなる。先進的なデザインとコンセプトで、カタナのようなヒットを狙ったこのGSX-400Xインパルスだったが、残念ながら思ったような売り上げは示せずに2年でカタログ落ちすることとなった。
ライバルネイキッドに真っ向勝負をかけた、3代目・4代目インパルス
三度インパルスのに名前がラインナップに復活したのは、1994年のことだった。1989年にカワサキ ゼファーのヒットが引き金となったネイキッドバイクブームを、スズキは同年に発売したバンディット400、1992年に発売したGSX400Sカタナで戦っていた。1992年にホンダからCB400SFが発売され、丸ライトのレジェンドバイクスタイルがブームの主役となった。そこにスズキが投入したのが、GS1000のデザインを踏襲した3代目のインパルス「GSX400 インパルス」だった。
この3代目のインパルスはボア×ストローク52×47mmと、同世代のGSX-R400Rなどと比べるとロングストローク設定の新開発の水冷4サイクル直列4気筒DOHC 4バルブエンジンを搭載。4into1マフラーや大容量エアクリーナーボックスを組み合わせ、低・中速での力強さと高回転での伸びの良さを両立していた。スタンダードモデルは単色のみの設定だったが、追加でラインナップされた「GSX400 インパルス typeS」はいわゆる「クーリーレプリカ」仕様で、ホワイト×ブルーのカラーリングに大きめのビキニカウルを備えていた。「クーリーレプリカ」という表現を使ったが、実際には「GS1000S」であり、このバイクでウエス・クーリーがAMAスーパーバイクをヨシムラと共に戦い、デイトナで勝利するなど大活躍したため後に「クーリーレプリカ」と呼ばれるようになっている。1996年にはブラック×レッドのヨシムラカラーが発売されるなど、スズキのレースレジェンドにちなんだ仕様で人気を博した。1999年モデルではフロントにブレンボ製の4ポットキャリパーを採用し、ヘッドライトがマルチリフレクター化されるなどの大幅なマイナーチェンジが行なわれた。
排出ガス規制によって1999年モデルで一旦生産中止となった3代目インパルスだが、2004年に排出ガス規制に対応した新型が登場した。4代目となるこの新型は、基本的なデザインは踏襲しているが、デザインやマフラーの形状など各部が大きく変更されている。ビキニカウル付きモデルはラインナップされなかったが、単色以外にホワイト×ブルーのカラーリングを採用。このモデルは途中で「GSX400 インパルス」から「インパルス400」へと呼称が変更されており、撮影車は2007年モデルなので「インパルス400」となる。最終年式となる2008年モデルには、初代インパルスをイメージしたブラック×レッド+ゴールドホイールの「インパルス400 Special Edition」がラインナップされた。
3代目・4代目のインパルスのモチーフとなったGS1000は、現在も続くスズキとヨシムラの出発点となったバイクであり、スズキを代表するレジェンドバイクと言える。そのイメージを引き継ぎ、ネイキッドブームを戦い抜いたインパルスは、現代においてもスタンダードバイクとして愛され続けている。
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