大抵の製品には商品名のほかに「品番」や「型式」が付いている。それは自動車でも同様であるが、殊にバス車両の場合、車種を区別するために個人レベルでもよく型式で表すことが多い。
文・写真:中山修一
(バス車両と型式にまつわる写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■ペットネームもあるけれど
最近のバス車両には、「プリウス」や「ジムニー」のように、乗用車と同じ要領でペットネームが付けられている。
現行の車種で言うなら、いすゞ「エルガ」、日野「ブルーリボン」、三菱ふそう「エアロスター」が旗振り役だ。
ペットネームが付いている昨今と言えど、バス趣味では車種を表す際に型式を使うことがかなり多い。これには昔からの慣習が少し含まれているかもしれない。
昔のバス車両はシャーシとボディを別々のメーカーで作るのが普通で、シャーシ側にペットネームが付いているものは存在していた。
ところが、車両を注文したバス事業者によって、ボディのメーカーが異なる(シャーシは同じでも見た目が変わる)ケースは良くあり、ペットネームだけでは判別し辛いため、最も確実な方法ということで、型式を使うのが好都合だったようだ。
■細かいことには変わらない?
バス車両がバリアフリーに本格対応して以降、車種のラインナップや見た目も昔ほど複雑ではなく、ペットネームだけで、どの車種かが大体分かるようになった。
それでも細かい箇所まで見ていけば、ここ20年ほどのバリアフリー車両の歴史の中で、多少のマイナーチェンジは何度も行われている。
マイナーチェンジを1つのバリエーションとして考えるなら、車両の種類が細分化されるのは昔と変わらず、やはり型式を使うと区別しやすくなる。
■複雑怪奇に見える!? バスの型式
現行の路線バス車両を例にすると、どのメーカーも大体「■■■-▲▲▲▲▲(○○○)」のような書式で型式を表している。
この中で、純粋な車両の種類を表しているのは「▲▲▲▲▲」に相当する箇所で、例えば「2PG-MP38FKFV」と書かれた車両だとすると、型式の“幹”の部分は「MP38F」ということになる。
(○○)の箇所は、車体の長さやオプション機能等、購入時に選択可能なサブバリエーションや、マイナーチェンジの回数を表していることが多いようだ。
同じメーカーで製造された、同系列のバス車両を細かく区別するにあたって、頻繁に使われるのは最初の3文字にあたる「■■■」の箇所。「PKG系」や「QRG系」のようにして表すと、その車両のバリエーションがある程度解る仕組みだ。
■メーカーはあまり関係ナシ
この最初の3文字が何を意味しているのか? 実はこれ、いつの排ガス規制の基準をクリアしているかを示したもので、メーカーではなく国が定めたものを、型式の頭に付け加えている。
車両型式の頭に、排ガス規制基準の文字が付くようになったのは、1979年の規制で、項目に「軽油を燃料とする自動車」が加わった頃からのようだ。
当時は自動車の種類によって固有のアルファベットが割り当てられていた。バスに関連してくる主なアルファベットを抽出して年代別に見ると……
K(1979規制)、P(1983規制)、U(1989)、KC(1994)、KK(1998)、KL(1999)、PJ(2004)
……といったアルファベットが並ぶ。これを踏まえると、型式の頭にKが付いていれば1979〜83年頃、Uなら1989〜94年頃まで作られていた車両ということになり、数年の誤差は生じるものの製造年代を大別する目安に使える。
趣味研究で「どの時代のものか」は特に大切な要素ゆえ、バスの種類を時系列に沿って表す際に、排ガス規制基準の文字が役立つ、というわけだ。
また、2005(平成17)年からは、排ガス規制の項目が増えたため、アルファベットもしくは数字を3つ組み合わせるようになった。
1文字目が排ガス規制年を表しており、バス車両でよく使われているものを時系列で記すと「P」→「LとQ」→「2」の順に新しくなる。