文:ケニー佐川(佐川健太郎)
ロイヤルエンフィールド(以下RE)から「ショットガン650」が新登場。同ブランドが近年注力している650ccエンジンを搭載したカスタムテイスト溢れるブランニューモデルである。箱根で開催された国内試乗会からモーターサイクルジャーナリストのケニー佐川がレポートする。
【マシン解説】
クルーザーベースに足まわりをスポーツ仕様に
60年代のカフェレーサーをイメージした「コンチネンタルGT」やネオクラシック「INT650」から始まった現代のREが手掛ける650ccシリーズの勢いが止まらない。そして、2023年デビューした「スーパーメテオ650」はコンパクトな車体を生かした元気な走りが光るミドルクルーザーだったが、これをベースにさらに走りに磨きをかけたロードスポーツモデルとして誕生したのが「ショットガン650」である。
エンジンは共通の排気量650ccの空冷並列2気筒OHC4バルブで最高出力も同じ47ps、骨格となるスチール製ダブルクレードルフレームも継承しているが、異なるのが足まわり。前/後ホイールサイズを18/17インチ(スーパーメテオは19/16インチ)に見直し、前後サスペンションのストローク長やスプリング&ダンパーのセッティングも変更。キャスター角を起こすなど、より運動性を重視した設定へと最適化されているのがポイントだ。
【試乗インプレッション】
空冷パラツインの重厚な乗り味が心地よい
ショットガン650のデザインは、ロイヤルエンフィールドの伝統的な美学を織り込みつつ現代的なエッセンスが加えられている。剥き出しの空冷エンジンに刻まれたフィンや流線形のタンクはクラシカルな印象を与える一方で、超コンパクトなビキニカウルにも見えるヘッドライトナセルにLEDヘッドライトと倒立フォークはモダンな構成。フローティングタイプのソロシート、そして、重厚な輝きを放つピアノブラック塗装が施されたレトロ感覚のスイッチボックスなど、古き良き時代のノスタルジーと現代的なセンスが見事に融合している。特にダブルシートからワンタッチでレトロなサドル型シートに変身する機能は、見た目の美しさと実用性を両立させつつ、オーナーのカスタムマインドを満足させる素晴らしいアイデアだ。
エンジンは並列2気筒ではあるが、最近ミドルクラスで流行りの水冷パラレルツインの軽快な乗り味とは異なり、270度の図太い鼓動とともに重いクランクがドルンドルン回る感覚が逆に新鮮だ。この重厚感のあるエンジンフィールは生理的に心地よく、バイクに対するピュアな感動と愛着が沸いてくる。空冷OHCではあるが4バルブ化により力強い加速が持ち味。低回転から高回転までフラットトルクで扱いやすく、6速ギアのつながりも滑らかなでストレスフリーな走りを実現。スーパーメテオ650をベースにしながらも、専用設定のショーワ製BPFや車体ジオメトリーによって、より積極的にスポーツティな走りを楽しめるようになっている。
レトロと革新が織り成す新たな走行体験
ハンドリングはユニークで、前後のタイヤサイズによる独特の特性が魅力だ。前後18/17インチのタイヤはフロントが細く(100)、リアが太い(150)設定によって、後輪からねっちりと倒し込むと、そのアクションに前輪が素直に追従して舵角が付いて曲がっていく。リアステアというか、ある意味おっとりとしたハンドリングが特徴で、80年代のバイクを彷彿とさせる乗り味は懐かしさと新鮮さを兼ね備えていて、それが個性になっている。
このフィーリングを計算して作り込んでいるとしたら、なかなかのしたたかさだ。
コーナリング中は常にどっしりとした安定感があり、街中はもちろんワインディングでもリラックスして乗れるのが魅力だ。また、スポーツ寄りのリファインされた前後サスとダブルクレードルフレームの組み合わせは、路面状況もしっかりフィードバックしてくれるので安心だし、薄く見えるサドル型シートもクッション性は高く長時間のライディングでも快適だった。ブレーキは前後ともに制動力は必要十分なレベルで、ABSが標準装備されているため思い切ってブレーキをかけてもロックすることなく、急ブレーキ時の安定感も問題なし。ブレーキタッチも良好でライダーが安心して速度コントロールできる。というように、装備もシンプルかつイージーに操作できるので最新電子機器に追われることもなくライディング中もストレスフリーだった。箱根に峠道を気持ち良く流すうちに、ふと、かつてのカワサキの名車、W1(ダブワン)を思い出した。排気量もほぼ同じ並列2気筒で奇しくもパワーも同レベル。上半身を起こして胸を張って堂々と跨り、じんわりと体に染み込んでくるエンジンの鼓動とホイールの回転慣性力の手応えを感じつつ、鉄の機械の温もりに包まれる心地良さ。そんな忘れていた昔の記憶を思い出させてくれる希少なバイクでもある。
ショットガン650はそのレトロな魅力と現代的な性能を絶妙に融合させた一台である。エンジンの独特な鼓動感、スポーティな走行性能、そしてユニークなデザインは、ライダーに新鮮な走りの体験を提供してくれると思う。街乗りだけでなくワインディングでも積極的な走りを楽しめるバランスの良さと長時間のライディングもこなせる快適性も兼ね備えている。シンプルながらも必要十分な装備と約100万円というプライスは、コスパも含め個人的にはとても魅力的と思えるがどうだろう。REではショットガン650はミドルクラスを牽引する新しいスタンダードバイクとして位置付けているという。それだけ最大公約数のライダーを満足させられる要素が詰まった自信作なのだ。
ディテール
SHOTGUN650(2024)主要諸元
・全長×全幅×全高:2,170×820×1,105mm
・シート高:795mm
・車重:240kg
・エンジン:空冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブ 648cc
・最高出力:34.6kW(47PS)/7,250rpm
・最大トルク:52.3Nm/5,650rpm
・燃料タンク容量:13.8L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=シングルディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=100/90-18 56H、R=150/70 R17 69H
・価格:97万4,600円/99万5,500円/101万5,300円
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/403158/
【試乗】ロイヤルエンフィールド「ショットガン650」クラシックとモダンの融合。懐かしくもスポーティな走りが楽しい!【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery2/?gallery_id=403158
コメント
コメントの使い方