世情が不安定だと何かにすがりたくなるのは古今東西変わらない。パワーを必要とする皆様のために、バスで行くパワースポットをバスマガジンWEBのオリジナル連載で紹介する。今月は東京都の櫻木神社で正式参拝をした。本稿には11月のバス占いも付録する。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■地下鉄も便利だけどバスなら目の前!
今月のパワースポットは東京都文京区にある櫻木神社だ。通称、櫻木天神と呼ばれ文字通り「天神さま(菅原道真公)」をお祀りした神社である。都心の超一等地らしく神社の間口は狭いが、ビルに囲まれた中で落ち着いた雰囲気を感じさせる境内だ。
場所は都営大江戸線と丸ノ内線の本郷三丁目駅からすぐ。しかし都営バスの本郷三丁目駅前バス停ならばさらに目の前という好立地で、時刻表要らずの都02系統が錦糸町駅前と大塚駅前を結んでいる。バスを介して多くの鉄道路線からアクセス容易かつ、都営バス屈指の便数が多い路線が目の前を通る。
大塚駅前方面から錦糸町駅前方面に向けた東行き方面のバス停で下車すると、数十メートルほど戻れば社号標と鳥居がある。反対方向(西行き)のバス停と地下鉄駅からだと、春日通を渡ったところに神社がある。前述の通り間口が狭いので探すほどではないにしても、注意して歩くとすぐにわかる。
櫻木神社は15世紀に京都の北野から、境内社の見送稲荷神社は伏見稲荷大社から勧請されたと伝わる。見送とは菅原道真公が太宰府に赴く際に形見として自身の像を刻み、見送ったとされることから本社は見送天満宮とも呼ばれた。諸説あるものの後年に桜の馬場に遷座され櫻木天神と通称されたが、稲荷神社は見送稲荷としてその名をとどめていると伝えられる。
■かわいいが3つも!
現代社会では荘厳な鎮守の森や社殿もいいのだが、フォトジェニックであったり、御朱印が有名だったりと、何らかの特徴が好まれる傾向にあるのはやむを得ないことだろう。当社はそれを狙ったわけではないのだが、まず参道左側に鳥小屋があり、そこには烏骨鶏の「くららちゃん」が「鎮座」する。
天神様の神使は牛であり、お稲荷様の神使は狐、熊野神社は八咫烏、神宮は鶏、八幡神社は鳩、三峰神社は狼なので、烏骨鶏が神使というわけではなさそうだ。実際に神社と縁あって養鶏場から引き受けられたのが烏骨鶏のくららちゃんなのである。フサフサの白い毛がかわいいと人気者で大切にされている。
あと2つの「かわいい」は神社オリジナルキャラクターだ。1つは巫女さんのキャラクターで名前はまだないが記者は巫女長と呼んでいる。そして最後のかわいいは、稲荷大神の眷属(けんぞく・お使いのこと)である狐が顕現した狐娘(名前はないので便宜上こう呼ぶ)で、現在は御朱印と一部の絵馬にしか登場していないが、今後は積極的に奉職してくれることだろう。
■正式参拝をお願いする
さて、このパワスポ連載記事は記者がバスで参拝したパワースポットを感じたままに紹介しているが、本稿では初の正式参拝をした。正式参拝とは拝殿にあがり御祈祷をしていただくことだ。記者の願意は「神恩感謝」である。
このようなパワースポットの記事が書けるのは八百万の神々との御縁や御神徳があってこそと考えれば、その恩に感謝するのは人として当然の礼儀だろう。日本史で習った鎌倉時代の御成敗式目に「神は人の敬に依りて威を増し人は神の徳に依りて運を添ふ」という一説がある。
神と人とは互助関係にあるとも読み取れる。パワー(徳や運)をいただいたのであれば、人は敬い感謝(参拝)することにより神の威光はさらに輝く、そしてまたパワーを分けてもらえるという神と人の好循環がパワースポットの本義なのかもしれないが、それは人の考え方次第なので本当のところは「神のみぞ知る」だろうか。
正式参拝は拝殿にあがり、座って待つと宮司が現れて御祈祷の執行を宣言する。最初に修祓(しゅばつ)と呼ばれるお祓いをする。祓詞(はらえことば)を奏上して紙垂(しで)や麻の繊維が付いたふさふさの大幣(おおぬさ)で左右左にわっさわっさと振って祓ってもらう。
通常の略式参拝では手水舎で手口を清めるが、それの正式版と考えればわかりやすい。これはまだ神様に何かを申し上げる前準備だ。修祓が終わると、神具や人(神職と願主)の罪・穢れ・禍事が祓われたので、宮司が記者の願意に沿って書いた祝詞を奏上する。この祝詞はオーダーメイドである。
最後に玉串奉奠(ほうてん)を行う。現在では玉串拝礼と言った方がわかりやすいかもしれないが、願意が神恩感謝なので神様に感謝を念じて奉じる。玉串を受け取り時計回りに回して榊の根元が神様に向くように捧げる。宮司がつつがなく執行を終えたことを宣言し、一連の祭儀は終了だ。