トヨタ「ライズ」やトヨタ「ヤリスクロス」など、日本市場において、人気カテゴリーのひとつであるコンパクトSUV。しかしながら、初代モデルが大ヒットし、2代目モデルが登場しながらも、日本市場には導入されなかったコンパクトSUVもある。日産「ジューク」とトヨタ「C-HR」だ。人気カテゴリーのモデルでありながら、なぜジュークとC-HRは日本で絶版となったのだろうか。
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:TOYOTA、NISSAN
コンパクトSUVの先駆けではあったが、日本で生き残るには個性が強すぎた「ジューク」
2010年2月に、初代モデルが発表となった日産「ジューク」。フランスでの発表後、日本で発売が開始された。その個性的なデザインが印象的だったジュークは欧州市場で大ヒット、2007年に投入した初代キャシュカイ(日本名はディアリス)とともに欧州日産を支えるモデルとなった。国内でも、当時日本には存在しなかった、コンパクトなクーペSUVというジャンルを切り拓くという活躍をし、2019年までの約9年間生産されたものの、2代目モデルは日本に導入されることなく消滅。その代わりとして、日本市場にはタイ生産の「キックス」が導入された。
キックスは、デザインがかなり保守的。2代目ジュークが欧州を主なマーケットとしているのに対し、キックスは東南アジアや南米、中国と、広大な地域をカバーしており、より実用性を意識してつくられている。キックスが日本に導入されたのは、個性的で面白いクルマをラインアップするよりも、幅広いユーザーを獲得するために実用性を重要視したということだろう。特にe-POWERで電動化戦略を打ち出したい日産にとっては、デザイン性よりも本質的な部分でアピールする必要がある。
初代ジュークの登場後、ホンダの「ヴェゼル」(2013)やトヨタ「C-HR」(2016)が登場し大ヒットした経緯を考えると、日本市場ではコンパクトSUVにおいても実用性を求める傾向があると思われ、ジュークの個性は日本では受け入れられないと日産が判断した経緯もうなずける。日産としても、余裕があればジュークとキックスの両方をラインアップしたいところだろうが、全体の車種を整理することで日産が強調したいポイントを浮き彫りすることができ、ジュークの日本撤退は、これを優先させたということなのだろう。
トヨタ肝いりの一台だったC-HR、ただユーティリティ重視の身内の登場で存在薄に
トヨタ「C-HR」は2016年に発売が開始されたクルマだ。TNGAプラットフォームを採用したモデルの第2弾で、トヨタの次世代世界戦略車という肝いりの一台でもあった。
ドイツのニュルブルクリンクをはじめとした、世界のあらゆる道路で徹底的な走り込みをし、SUVでありながら高い運動性能を追求するという、異色のモデルだったC-HR。クーペライクな見た目はいかにもスポーティで、それまでのトヨタにはない、かなり斬新なスタイリングは当時話題となった。トヨタお得意のハイブリッドモデルもラインアップされ、初代C-HRは欧州や日本で大ヒットを記録。個性的な外観も、ただクセが強いというより「カッコイイ」という評価に寄っており、デザインの評判がイマイチだった当時のトヨタ車のイメージを覆した。
しかしながら、2020年にはヤリスクロスが、2021年にはカローラクロスが発売され、トヨタのラインアップにおいてコンパクトSUVがC-HRを含め3車種ラインアップされることに。ボディサイズは少しずつ異なるが、居住性やユーティリティを重視してつくられたヤリスクロスとカローラクロスを前に、C-HRは徐々にそのポジションを奪われていき、2023年7月、国内生産が終了に。海外ではすでに2代目モデルが販売されているが、日本市場には導入されていない。
ジュークを日本から撤退させた日産と同様、トヨタも、個性やデザインよりも実用性を重視する日本市場では、C-HRをラインアップから外すことで、ブランド全体の販売戦略を強化しようとする狙いがあったのだろう。
コメント
コメントの使い方頑なに5ドアハッチバックを拒んできた日本人に、「プリウス(2代目以降)は4ドアセダン」とトヨタが主張するんだから、2代目C-HRも「プリウスクロス」って名前で出せば、日本人は騙されて買っちゃいそうだしな。
結局SUVにすら実用性が優先される国民性だった、というだけ。両車とも欧州では継続的に人気車であり続けて世代交代もしてる
日本で車売るなら独自性に完璧に合わせるか、ブランドで頬叩くしかない