なぜ新型ヤリスは路線変更? 注意点は「後席の広さ」
購入時に注意したいのは後席だ。現行ヴィッツは、開発のテーマに「外観はコンパクトでも広い室内空間と高いユーティリティ」があり、後席と荷室の広さにも重点を置いていた。
しかし、ヤリスの後席はヴィッツよりも狭い。身長170cmの大人4名が乗車した場合、後席に座る乗員の膝先空間は、ヴィッツは握りコブシ2つ分だがヤリスは1つ半に減る。前後席の乗員間隔は、ヴィッツに比べて37mm少ないからだ。
さらに、後席の床と座面の間隔も32mm減ったから、座った時に腰が落ち込む度合いも強まった。後席に座る乗員の足が前席の下側に収まるから、大人4名の乗車は可能だが、ヴィッツに比べて座り心地は窮屈だ。
つまり、ヴィッツはファミリーユーザーも視野に入れて開発されたが、新しいヤリスはドライバーを優先させた設計だ。既存の車種でいえば、内装の質を高めたことも含めて、マツダ2(旧デミオ)やスイフトに近づいた。
ヤリスがこのような方向に発展した背景には、同じGA-Bプラットフォームを使った今後のモデル戦略が絡む。かつてのファンカーゴのような天井の高い空間効率の優れた車種も追加されるため、ヤリスは前席優先に割り切られている。
日本では、ルーミー/タンクが好調に売れている事情もあるだろう。この車種は約2年で開発された経緯もあり、走行性能、乗り心地、後席の座り心地が悪い。そこでヤリスを前席優先で開発したという事情もある。
走行性能も大幅に進化する。新開発された直列3気筒1.5Lエンジンは、ヴィッツが搭載する直4・1.3Lに比べて、動力性能と燃費の両方を向上させる。従来型の改良版を搭載するヤリスの直3・1Lエンジンと比べても、新開発の1.5Lは動力性能に加えて燃費も良くなりそうだ。
ヤリスへの期待と課題 フィットとともに小型車活性化の鍵握る
今後の課題はNAエンジンのアイドリングストップだ。ヤリスはハイブリッドを除くとアイドリングが停止しない。環境性能の向上やユーザーのニーズを考えると、せめてオプションでアイドリングストップを用意する必要がある。
プラットフォームとサスペンションは新開発されるので、走行安定性と乗り心地は新型カローラなどと同じ方向へ進化する。ボディとサスペンションの取り付け剛性を高め、基本性能を向上させることで、足まわりを柔軟に動かすチューニングを行う。
以上のようにヤリスは、ファミリーユーザーには適さないが、1~2名で乗車する用途では選ぶ価値の高いコンパクトカーになる。安全装備に加えて運転支援機能のクルーズコントロールなども用意されるから、長距離を移動するニーズも満足させられる。
また、今は新車として売られるクルマの37%前後が軽自動車で占められ、軽乗用車の内、80%以上は全高が1600mmを超えるハイトワゴンやスーパーハイトワゴンだ。そうなると商品の性格が異なるため、ヤリスと軽自動車が競合することはない。
ただし、「最近のコンパクトカーには良い車が見当たらない」という理由で軽自動車に乗り替えたユーザーが、ヤリスを購入することは考えられる。ヤリスだけで軽自動車人気にストップを掛けることは不可能だが、コンパクトカーの需要を増やすことには繋がる。
特にフィットも新型にフルモデルチェンジされるから、新型ヤリスとの相乗効果で今後はコンパクトカーが注目されそうだ。フィットは先代型と同じく空間効率が優れているので、ヤリスとは商品の性格が違う。競争しながら、共存も図れるだろう。
また、ヤリスと新型フィットが登場すれば、マツダ2、ノート、スイフトなども黙ってはいられない。商品改良や特別仕様車の投入を行う。コンパクトカーの世界が久しぶりに活性化されて、楽しくなりそうだ。
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