安っぽいヴィッツのイメージ払拭なるか!?
トヨタ ヴィッツの後継モデル、「新型ヤリス」が2019年10月16日に世界初公開(発売は2020年2月)! ノートやアクア、そしてフィットなど登録車販売の上位を占める、売れ筋の5ナンバーコンパクトカーとして、車名も新たに再出発を図る。
現在販売されている「ヴィッツ」は通算3代目。広い室内や使い勝手を売りとする一方、2000年に年間16万台を売り上げ、高い評価を得た初代や2代目モデルに対して「質が下がった」との指摘もあった。
税金が安く、質の高い軽自動車が人気を集め、さらに高価格化が進むなかで、コンパクトカーは今、非常に難しい立ち位置に置かれている。そうした背景があり、以前より元気がないのが実情だ。
これなら軽で充分。そんなユーザーが増えるなか、コンパクトカーのパイオニアであるヴィッツが改名し、世界戦略車のヤリスとなった。
新型「ヤリス」は、「ヴィッツ」のイメージを良い意味で払拭することができるのか。
文:渡辺陽一郎
写真:編集部
【画像ギャラリー】質は上がった? 新型ヤリスとヴィッツを写真で徹底比較!
今のヴィッツは質を下げた!? 背景にある2つの理由
初代ヴィッツは、スターレットの後継車種として1999年に発売。欧州などの海外でも売られ、丸みのある外観と上質な内装が特徴だった。
2代目は2005年に発売され、内装の質や乗り心地をさらに高めた。2001年に初代フィットが発売されて好調に売れており、対抗する目的もあった。
ところが2010年発売の現行型は、内外装、乗り心地、振動、静粛性などを悪化させた。インパネの周辺は、樹脂素材を意識させる仕上がりであった。
フルモデルチェンジを行って、ここまで質を下げた車は珍しい。ネッツトヨタ店のセールスマンが「これでは先代型を使うお客様に、新型の購入を提案できない」と悩むほどであった。
質を下げた理由は主に2つある。
まずは2008年後半に発生したリーマンショックで、2009年にはトヨタが赤字決算に陥ったこと。2つ目は、2000年代中盤以降のトヨタがライバル車をあまり意識しなくなったことだ。
それまでのトヨタは、他メーカーが好調に売れるヒット商品を生み出すと、それを駆逐するライバル車の投入や商品改良で対抗したが、3代目ヴィッツの頃には競うことを諦めてしまった。
この後、ヴィッツはマイナーチェンジを繰り返し、内外装、乗り心地、静粛性などを改善していったが、改良で行える商品力の向上は限られる。しかも現行型は9年間も売り続けたから、設計の古さが目立っていた。
新型ヤリスは新エンジン&車体で渾身の開発
そこで新型のヤリスは、新開発の直列3気筒1.5Lエンジンを搭載して、ハイブリッドにも組み合わせる。プラットフォームはTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)の考え方に基づく「GA-B」と呼ばれる新しいタイプだ。
ヤリスのボディサイズは、現行ヴィッツとほぼ同じだ。外観は前方視界を向上させるために、フロントピラー(柱)の位置を100mm以上後方に移した。
前方視界は確かに向上して、右左折では横断歩道上の歩行者を見やすくなったが、サイドウインドウの下端を後ろに向けて持ち上げたから斜め後方と真後ろの視界は良くない。
最小回転半径は4.8~5.1mとされ、ヴィッツが4.5~5.6mだから、おおむね良好だ。後方視界に注意すれば、コンパクトカーらしく運転しやすい。
車内に入ると、ヴィッツの欠点だった内装の造りが向上した。部分的に柔らかいパッドも使われ、コンパクトカーとしては上質だ。メーターは見やすく、エアコンなどのスイッチを高い位置に装着したから操作性も良い。
シートは刷新され、特に背もたれの下側から座面をしっかり造り込んだ。そのために腰が適切に支えられて着座姿勢が乱れにくく、疲労も抑えられる。
また、ヤリスのホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2550mmだから、ヴィッツに比べて40mm長い。
この寸法は主に前輪を前側へ押し出すことに使われ、その結果、ペダルを従来に比べて右側へ寄せることが可能になり、運転姿勢とペダルの操作性も向上。この改良は踏み間違い事故を防ぐ効果も期待できる。
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