■DATA3/踏み間違い事故は、意外にも直進時が最多、次いで発進時
駐車場等でどのような運転行動を行った際に事故が起きやすいのか? 下表5で四輪車が第1当事者になったペダル踏み間違い事故割合を平成24〜28年まででまとめているが、各年齢層に共通して、発進時と直進時の割合が高いことがわかる。特に高齢になるにつれその割合が高くなり、事故を起こす危険性は加齢に伴って高くなる。
ではなぜ踏み間違い事故は起きるのか? その要因も分析されている。割合の高い発進時(前向き駐車時、駐車位置の調整、駐車場からの発進)においては、「踏みかえ回数の増加(切り返しの増加)」。
直進時(駐車場所まで向かう途中、駐車場で入り口まで向かう途中)では、「速度調整機会の増加」「不注意な運転(わき見)」。後退時(駐車するために後退中、後退発進する時)は「体をひねる」「踏みかえ回数の増加」「急な後退」が挙げられる。
高齢化による身体能力、集中力の低下、体の柔軟性の低下によって、頻繁にペダルを踏みかえる動作でミスをしやすくなるのだ。
■DATA4/加齢による関節の老朽化が、事故を発生させる要因に
駐車場等での踏み間違い事故は、加齢で衰えた高齢者がペダルの踏みかえを頻繁に行うことが要因で発生するのだが、実は体の柔軟性も影響を及ぼすことが明らかになった。
前進や発進時に比べれば割合は少ないが、後退時にも踏み間違いが起きる。この点に着目し、福山大学工学部とITARDAが共同研究を行った結果、着座姿勢とペダルの踏みかえ挙動がその要因であることをつかんだ。
高齢ドライバーが運転中に上半身を右方向にひねるような姿勢をとった状態でブレーキペダルを踏もうとすると、無意識のうちに足先が右方向へ移動し、ブレーキペダルを踏むつもりでアクセルペダルを踏んでしまうのだ。
実際に調査をした結果、高齢ドライバーは男女問わず、上半身を右方向にひねった状態で後方を目視する姿勢をとると、体(特に大腿部)の柔軟性が低下していることにより、下半身が上半身に引っ張られるようになる。
そうすると、ブレーキを踏んでいるつもりでも、足先はアクセルも踏むことになる。本人はブレーキを踏んだつもりでも、実は無意識にアクセルを踏んでいるということになるのだ。
■DATA5/安全運転サポート車促進も、平均車歴が伸び、効果は低い
近年、衝突被害軽減ブレーキや踏み間違い時加速抑制装置が、続々と新車に搭載されているが、そのような安全運転サポート車による事故防止は大きな期待が寄せられている。
2020年までにはおおむねすべての新車に搭載が可能になるとの見通しが示されているが、それで踏み間違い事故は大きく減少させることができるのだろうか? 残念ながら、答えは否だ。
平成28年の事故データを基に、年齢層別・普通乗用車と軽自動車が第1当車両となった全事故を調査した結果、各年齢層に共通して事故車両は車齢が高いクルマを使用していたことがわかった。
75歳以上の高齢者に至っては、約半数の46.5%が初度登録から10年以上経過した車両で事故を起こしていた。非高齢者(64歳以下)でも41.2%となっていた。
現在市場で登録中の普通乗用車や軽自動車の平均車齢は8年以上と伸びており、ペダル踏み間違い時加速抑制装置が搭載されたクルマに買い換えが進むことだけ期待していても、事故は減ることはないと考えられる。運転者の意識改革が必要だ。
踏み間違い事故を防ぐには、駐車場などではクリープ現象を積極的に使うことと運転操作の再確認を意識することだ。急発進させてパニックに陥ると、被害を拡大させる恐れがある。何かあっても冷静に対処できるように心がけたい。
池袋の母子死亡事故などのような痛ましい事故が発生しないよう、年齢問わず凶器となり得る自動車を運転していることを自覚し、注意してもらいたい。
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