16代目クラウンの4種目のボディタイプ「エステート」が登場。これで新生クラウンの全バリエーションが出揃った。これを機に、トヨタはすべてのクラウンに乗れる試乗会を開催。改めて全車に乗って、各車の個性と魅力を探った。
※本稿は2025年4月のものです
文:鈴木直也/写真:奥隅圭之、トヨタ
初出:『ベストカー』2025年5月10日号
16代目クラウンの真打ち登場!
18年ぶりに復活したクラウンエステートは、群戦略で戦う16代目クラウン最後のピース。真打ちは最後に登場するというが、その言葉にふさわしい出来のよさが印象的だった。
まず、イイところその1は、使い勝手がよく、さまざまな遊びの発想が広がるパッケージングだ。
後席を畳むと完全フラットになるラゲッジフロアは、標準状態でも570Lあるから4人ゴルフも楽勝。後席を折り畳めばワゴンカテゴリーの中でも指折りのフラットな空間が出現し、自転車など大物もラクに収納可能となる。
イイところその2は、このインテリアを包み込むデザインだ。
ワゴンといえば従来はセダンベースが主流だったが、クラウンエステートはSUVから派生したハイトの高いパッケージ。
全長4930mm、全幅1880mm、全高1625mmというディメンションは見た目にもちょっと大柄で、それゆえにマッシヴな逞しさがある。乗用車の主流がSUVになって久しいが、その中にあっても「オッ!」と目を惹く存在感がイイ。
そしてイイところその3。これだけ欲張りなユーティリティ性を盛り込みながら、クラウンスポーツにヒケをとらない走りのレベルを達成しているのが素晴らしい。
HEV/PHEVのパワートレーンはクラウンスポーツとほぼ共通だが、積載重量が大きく変動する点を考慮してHEVはフロントモーター出力をアップ(120ps→182ps)。リアサスのセッティングも大きな荷重変動に対応したセッティングが施されている。
このモーター出力アップはふだん実感するレベルではないが、4人乗車+遊び道具満載といった状況でも力不足を感じないよう配慮されているといったところ。
HEVのドライバビリティはいつでも必要十分プラスアルファといった感じで、約1.9トンのボディを、余裕を持ってクルージングさせてくれる。これでWLTCモード燃費20.3km/Lなんだから、もはやこれ以上何をか望まんやだ。
先行3種のイイトコ取り!?
クラウンスポーツで驚かされた、優れたハンドリングはそのままエステートにも継承されている。
もちろん、ホイールベースが80mm短いスポーツのほうがハンドリングはシャープで、クラウンとは思えないほどひらりと向きを変え、電動4WDらしく最適制御されたトラクションと相まって効率よくコーナーを立ち上がる。スポーツカーテイストを重視するなら、エステートよりスポーツを選ぶべきだろう。
対して、エステートの美点はスポーツに匹敵する運動性と、より洗練された乗り心地、そして優れたユーティリティ性能が高次元で両立している点だ。
とりわけ見事なのは、荒れた路面を低中速で通過するようなシーン。これは従来トヨタ車が苦手としていたシチュエーションなのだが、引き締まった骨格と固めながらよく動く足のコンビネーションによって、苦手課題を見事に克服している。
シャシーの総合バランスに関してはクラウン4車型のなかでもベスト。とりわけしなやかに引き締まった乗り心地は、同クラスの欧州プレミアムを凌ぐ水準に達しているといっても過言ではないと思う。
今回の試乗会ではクラウン4車型にイッキ乗りできたから、それぞれに特有のキャラがあることが再確認できた。
セダンのソフトなクラウン伝統の乗り心地。スポーツPHEVの本格スポーツカー顔負けの硬派な走り。そしてクラウンの殻を破ったカジュアルなクロスオーバーの乗り味。まさに「お好みでどうぞ」というのが群戦略ならではのアプローチだ。
そんな4つの個性の中で、何をやらせてもソツなくこなすのがクラウンエステート。一台だけ選ぶとすると、やっぱりコイツの総合バランスが光るなぁ。
●トヨタ クラウンエステート Z 主要諸元
・全長×全幅×全高:4930×1880×1625mm
・ホイールベース:2850mm
・車両重量:1890kg
・最低地上高:175mm
・パワーユニット:直4、2.5Lハイブリッド
・エンジン最高出力/最大トルク:190ps/24.1kgm
・モーター最高出力:フロント182ps/リア54ps
・システム出力:243ps
・トランスミッション:電気式無段変速
・駆動方式:E-Four
・サスペンション(F/R):ストラット/マルチリンク
・タイヤサイズ:235/45R21
・価格:635万円


























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