2020年末のバス業界はコロナ禍をどう見てた? 未だ終わらぬコロナとバスの戦い

サブ・シナリオが必要

図2:メインシナリオとサブシナリオ(高速バスの事例) いくつかのシナリオパターンを想定しておく
図2:メインシナリオとサブシナリオ(高速バスの事例) いくつかのシナリオパターンを想定しておく

 だが、悲観的なケースに備え、3つのサブ・シナリオ(プランB)も用意する必要がある(図2参照)。具体的にみてみよう。

 サブ・シナリオの1つ目は、「緊急事態」に立ち戻るケースだ。このケースで最も重要なのは資金と雇用だ。後者の対策として、今のうちに万一の際に乗務員の出向や副業を受け入れてくれる異業種企業を見つける必要がある。

 2つ目はワクチンに重大な副反応が見つかるなどしたケースだ。「自粛」と「緩和」を繰り返しながら「ただの風邪」となるのを待つことになる。この場合、事業の見極めがカギになる。

 収束後を考えれば簡単に事業を縮小したくない。「停留所の権利」が絡む高速バスでは特にそうだ。だからと言って永遠に赤字運行を続けるわけにはいかない。自社の経営体力を考慮し、路線別の累積赤字額など、あらかじめ「撤退基準」を決めておく必要があろう。

移動の需要が回復しない想定も

 サブ・シナリオ3つ目は、事態が収束したのにバスの需要だけが戻らないケースだ。特定の地域や市場だけが回復しないケースもありうる。現に同じ通学客でも、高校生以下と大学生では回復ペースが違う。同様に工業団地の従業員輸送は安定しているが、オフィス勤務者は在宅勤務が一部で定着するかもしれない。

 自社の市場が「回復しない方」に当たるのであれば、早期に撤退または事業モデル(お金の出どころ)の転換を図る必要がある。

前向きなケースもありうる

 なお都市部の路線バス事業に限っては、逆に事業の効率性が高まるという前向きな期待も可能だ。現状では車両や乗務員の数はラッシュのピークに合わせている。昼間の稼働が低く収益性が低い上、長時間の勤務シフトが生まれている。朝夕ラッシュの山が低くなれば、その非効率を解消できるはずだ。

 いずれにしても、危機に耐えうる体力は事業者ごとに異なるし、需要回復の度合いやスピードは市場によって違う。この場では対応策を例示はできるが、最終的には事業者自身に自らのロードマップを作ってもらうしかない。

 まずは、「収束まで/無事に収束/事態長期化」といったフェーズに分け、かつ、「運行/営業/ファイナンス」といった分野ごとに、考えられうる対応策を書き出してみることだ。

 思いつく施策を全て列記した上で、法規制やコスト面で困難なものを削除し、優先順位をつけていく。各社とも目下の事態への対応に忙しいだろうが、一度立ち止まって、長めのスパンで今後を俯瞰してもらいたい。

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