そしてバス王国の九州では……
一方で、地方ではやはり西鉄を中心に例に挙げなければならないだろう。短距離でも中距離でも鉄道に果敢に挑み、完勝している路線さえある。
短距離では北九州-福岡間の高速バスは以前ほどの利便性はなく、最近は減便と北九州側の経由地分散で使いにくいと定期利用者から苦情が上がるほどにまでなってしまったが、それでも都心直結で住宅地の近隣バス停が利用できる強みは大きい。
都市間では九州新幹線開業に脅かされながらも、在来線特急がなくなったことを尻目に利便性と運賃の安さで乗客が減らなかった福岡-熊本線「ひのくに号」が好例だ。
さらに福岡-別府・大分線の「とよのくに号」に至っては、鹿児島本線と日豊本線を北九州市(小倉)経由で遠回りするしかない鉄道に対して、高速バスは福岡市から鳥栖JCTを介して久大本線沿いに直行できる。運賃はもちろんだが所要時間でも特急列車と大差ないので、振り子電車を投入して防戦したJR九州を苦しめている。
まだある。福岡-宮崎線「フェニックス号」は、博多-宮崎間の直通特急列車をほぼ駆逐してしまった。宮崎駅で福岡から夕方以降に到着する便を見ていると、若い人が福岡に遊びに行った帰りであることがよくわかるほど好調だ。
福岡発の最終便は2045で、宮崎駅着はなんと0130と福岡でのレジャーやビジネス需要をよく考えられているダイヤだ。ちなみに逆向きも似たようなダイヤだ。もはや相手は航空機といった様相だ。
負けた事例もある。北九州-別府・大分線の「ゆのくに号」だ。こちらは振り子電車を投入したJR九州に完全に負けてしまい、路線ごと休止に追い込まれた。大分側の事業者が先に撤退していて、西鉄バス北九州が単独で路線を維持していたがコロナもあり力尽きてしまった。
西九州新幹線競合はJRが追う立場か?
九州ついでに最新の話題と言えば西九州新幹線だ。所要時間はさすがに鉄道にはかなわないが、運賃は割引乗車券を考慮しないとバスのほうが約半額であり、乗り換えなしなので新幹線開業に伴うご祝儀相場経過後に注目だ。
ちなみに博多駅から長崎駅までの最終接続を見てみると、鉄道が2207発リレーかもめからの乗り継ぎで長崎には2339着。一方で九州急行バスの「九州号」は2234発で長崎駅前に0104着と、保線のために日付を超えて営業運転ができない新幹線が不利である。逆向きは鉄道のほうが有利で最終はバスのほうが90分程度早く発車する。
バスはポテンシャルの高い輸送機関
路線バスでも高速バスでも、どちらが良いとは一概に言えないが、バスが入れる道路さえあれば路線とダイヤを比較的自由に設定できるバスは、高い能力を秘めているといえる。
あとはバス事業者がどれだけ人のが流れを読み、あるいは人の流れを創造するのかがカギになるのではないだろうか。時間はかかるが安くて便利で快適なバス旅を楽しんでいただきたい。
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