■飯田線と松本線のニーズの差は?
新宿~飯田は、鉄道の直通がなく高速バスが主な交通手段だから、飯田に帰る人は満席なら次便を待つしかない。しかし新宿~松本は特急電車と競合する。
当時、高速バス松本線が毎時50分発。そして10分後の00分には、新宿駅から特急「あずさ」が発車する。松本のお客様には、丁寧よりクイックな接客が重要なのだ。
マーケティング、とりわけダイナミック・プライシングは、便ごとの需要を分析する仕事だ。単に需要の大小(乗車率)だけではない。どういう人が何の目的で移動するのか、いくらの運賃差があれば鉄道ではなく高速バスを選択してくれ、あるいはピーク時間帯から前後にずらしてくれるか、心理を読む仕事だ。
多くの路線の便ごとの輸送人員や客単価の一覧表を見比べるのは興味深い。なぜこの路線だけピーク時間帯がずれるのか? この路線の競合相手は、同区間の在来線ではなく、実は山の向こうの新幹線駅でのパーク&ライドではないのか?
無機質な数字の羅列からお客様の「顔」が自ずと浮かぶ時、正しく分析できているという手ごたえを感じる。