近年急速拡大を続けるEC(イーコマース=電子商取引)市場を背景に宅配便の取扱個数も増加しており、国土交通省の調べによると令和3年度の取扱個数は49億5300万個におよぶ。
現在は日本の総人口の約40倍もの宅配の荷物が行き交っているわけだが、それに準じて増えてきたのが再配達件数だ。国交省は2025年に再配達率7.5%の削減目標を掲げているものの、先ごろ発表された令和4年10月(1~31日)ぶんの再配達率は依然11%強となり、下げ止まり傾向が顕になった。
再配達は配送側・受け取り側双方にデメリットでしかなく、二度手間になるため配送車両の排出ガス量も増加し環境にも悪影響を与える。今回はそんな「誰トク?」である再配達について今一度考えていきたい。
文/フルロード編集部、写真・表/フルロード編集部・ヤマト運輸・国土交通省
【画像ギャラリー】受け取り側のちょっとした心がけで減らせる!? 喫緊の課題「再配達」について考える(8枚)画像ギャラリー宅配便と再配達個数の推移
国道交通省の調べによると、宅配便(トラック・航空等利用輸送の合計)取扱個数は平成元年(1989年)は10億個だったが、平成10年(1998年)には18.3億個、平成20年(2008年)32.1億個、平成30年(2018年)には43億個、そして昨年令和3年は49.5億個となっている。
まさに右肩上がりの急拡大であるが、押上要因である国内ECショピングサイトのシェア1、2位競う楽天市場とアマゾン(ジャパン)は、前者が1997年に、後者は2000年に開設。またシェア3位のYahoo!! ショッピングは1999年に開設している。
この他に最近は、オンラインセレクトショップのZOZOTOWN(2004年~)の躍進や、出品点数25億を超えたとされるフリマアプリのメルカリ(2013年~)など特化型のECサイト・アプリ等の取引も活発となっているのはご存知の通りだろう。
こうしたEC市場は現在、全体で20.7兆円規模、物販系分野は13.3兆円規模であるとされ、新規参入する企業(あるいは個人)も多い。政府の予想では今後も宅配便の取扱個数は増加するとみており、単純な推定値の計算では2025年には58.8億個、2030年には71.5億個になるとされている。
いっぽう再配達率は、国土交通省が4月期と10月期の年2回行なっている大手宅配業者から聞き取りした「宅配便再配達実態調査」では、2017年10月期~2019年10月期まで15~16%で推移。2020年4月期で一気に8.5%まで下落したものの10月期は11.4%に上昇し、2021年の4月11.2%、10月11.9%、2022年の4月11.7%、10月11.8%と下げ止まり傾向となっている。
2020年4月期に8.5%まで急落したのは、コロナウイルス蔓延により在宅が多くなったなどの要因が考えられるが、ちょうどアマゾンが30都道府県で「置き配指定サービス」をデフォルト設定に切り替えた時期とも符合する。
国土交通省では、「総合物流施策大綱(2020年度~2025年度)」において宅配便の再配達率の削減目標を2020年度10%程度→2025年度7.5%程度に設定している。宅配便の総個数は増加し続けているわけで、総じてみれば取扱個数における再配達率の割合は減少しているという見方もできるが、迫る2025年度目標の7.5%まではまだいっそうの努力が必要である。