バスはディーゼルエンジンで動かすのが普通。それでもディーゼルでなければ絶対ダメという決まりはないハズ。ガソリンエンジンを積んだバス車両は無いのだろうか?
文:中山修一
写真(特記以外):中山修一/バスマガジン編集部
大型車にガソリンエンジンは不向き?
現代のバス車両のラインナップを見てみると、その殆どがディーゼルエンジンを積んでいる。電動モーターと内燃機関を折半したハイブリッド車も、バスで組み合わせるエンジンは基本的にディーゼルだ。
これには様々な条件が重なっている。まず、ガソリンエンジンは車両を高めの速度で軽快に走らせたい時に向いた特性を持っている。一方のディーゼルエンジンは、車両を低めの速度で力強く走らせるのが得意とされる。
バスが乗せるのは何十人もの人間。トータルの重さとなれば人だけで3トン以上に達する。そんな状態で細かな発進・停止を繰り返すバスにはディーゼルエンジンのほうが適任となるわけだ。
他にも、ディーゼルエンジンの場合はガソリンエンジンに比べ、単独で火災を起こしにくいという特徴がある。安全が重視される公共交通機関で使う乗り物に、この利点を活用しない手はない。
ほかディーゼルが選ばれる最大の理由は、やはり燃料の軽油がガソリンよりも安価であるため、コストが抑えられること大きいだろう。
ディーゼルエンジンが少数派だった時代
では、バス車両が開発された初期の頃から、積んでいたエンジンはディーゼルだったのかと言えば実はそうではない。1940年代まで遡ると、普通乗用車もトラックもバス車両も、ガソリンエンジンを搭載しているクルマがほとんどだった。
ディーゼルエンジンが発明された当初はエンジン本体が大きく重かったため、船舶向けの性質が強かった。小柄な自動車に搭載するのは物理的に難しかったのだ。
1930年代半ば頃には自動車用の日本製ディーゼルエンジンの販売が開始されているが、この頃はガソリン車に比べ燃費が良いことをアピールポイントに掲げていた。
どのバス用車両もガソリンエンジンが標準装備であり、あくまでディーゼルはオプションの扱いになっている。
戦時色が濃くなる1940年代初めの自動車カタログを開くと、国策的な意味合いを含んだガソリン節約のための代替燃料車の欄に、木炭車などと一緒にディーゼルエンジンが単体で紹介されている。
当時のディーゼルエンジンは本体価格が非常に高額で、節約した燃料代で“もと”が取れるまで3〜4年かかると言われていたようだ。それもあってか普及しなかったようだ。
戦後に登場するバス車両もしばらくの間はガソリンエンジンが優勢であった。風向きが変わり始めるのは1950年代に入ってからで、この年代を境に少しずつディーゼルエンジンへと軸足を移していった印象だ。