2018年に西日本を襲った豪雨。多くの人命が奪われる災害となったが、住居やクルマなどの被害も甚大なものだった。実はこの災害である夫婦が我が子の形見として保存していたフェアレディZが水没した。Zをどうにかして救いたい、立ち上がった整備学校と学生の挑戦を取材しました。
文/写真:ベストカーWeb編集長 塩川雅人
■完全水没したZを直すには「日産魂」が必要だ
西日本豪雨。2018年7月に岡山、広島をはじめ、西日本の多くの地域に多大な被害をもたらし、200人以上の死者を出した豪雨災害だ。多くのクルマも水没し、生活を支えた相棒を失った人も多い。
そのなかに1台の流麗なクーペがあった。それが今回のS130型フェアレディZだ。エンジンルームは泥まみれ、完全に水没するなど一般的には廃車が妥当な選択肢だ。
そのフェアレディZのオーナーは手塩にかけて愛車を愛でていた青年Yさんだった。しかし残念ながら彼は20年以上前に交通事故で亡くなり、Yさんの両親が形見としてガレージで大切にフェアレディZを保管していた。
あれだけわが子が愛情を注いだフェアレディをスクラップにはできなかった。遺されたZはもはや単なるクルマではなく、亡き我が子の分身でもあったのだ。そんなZが水没してしまった。
水没後にYさんの両親は教材として自動車整備学校にフェアレディを提供することを決めた。そこから話が進み、他の自動車整備学校を経て日産京都自動車大学校で完全修復する道がとられた。日産京都自動車大学校の担当者は言う。
「最初はトヨタ神戸自動車大学校さんにご両親から教材にと打診があったんです。しかしトヨタさんの先生から日産京都自動車大学校に連絡がありました。”教材として非常に貴重で意義のある個体だけれど、日産車は日産のプロの皆さんが修復したほうがオーナーさんが喜ぶと思う”とのことでした」。
メーカー間を超えたリレーで、2019年になり日産京都自動車大学校に鈍い輝きを放つフェアレディZが運ばれた。
コメント
コメントの使い方素晴らしい活動ですね。宣伝ではないといいつつ、自動車整備士希望の学生さんが減っている昨今でもありますし、もっとPRとして活用してもいい気がしました。これを取り上げてくださったベストカーさんに感謝です。