亡きオーナーに届けたい……よみがえれフェアレディよ!! 水害被災車を救う学生と先生のクルマ愛

■オーナに寄り添ったレストアをする

L20はレストアを終えた。心臓移植はせず、あくまでもベースのエンジンにこだわった
L20はレストアを終えた。心臓移植はせず、あくまでもベースのエンジンにこだわった

 そこから4年の月日が流れた。S130は心臓のL20エンジンのレストアも終了しエンジンに火が入っている。しかし分解時はシリンダーに泥が混入し当然ながら分解洗浄だけで火が入る状況ではなかった。L型エンジンならば他の程度のいいエンジンに載せ替えるのが効率を考えたら普通だ。学内で保存しているL型エンジンへの換装も考えたという。

 しかし教員や学生から声が出た。「クルマの心臓部を挿げ替えたらオーナーのクルマとは変わってしまうんじゃないか。エンジンはできるだけ生かしたい」。

 あえていばらの道を選んででも天国のオーナーに届けるためのレストアを進める。ボディも一見するとツヤがあったものの、塗装の匠の日産京都自動車大学校の教員の目には違和感があったという。

リアフェンダーの地の様子。このような凹みの根本を修復せず、安易なパテ盛りがされていた。予算の兼ね合いかもしれないが……
リアフェンダーの地の様子。このような凹みの根本を修復せず、安易なパテ盛りがされていた。予算の兼ね合いかもしれないが……

 実際にボディの塗膜を剥離して整備を進めると何センチもの厚みのパテが出てきた。

「フェンダーの凹みを修理したんだと思うんです。もしかしたら予算の都合かもしれないけど、鉄板をたたき出さずに凹みの上から3cmくらいのパテを盛って造形してあった。僕らから見たら粗悪な修理だし、美しくない。本当ならしっかりした修復をしたかったんじゃないかな。僕らが完璧に仕上げます」。

 レストアを担当する学生はちょっと誇らしげに言った。YouTubeやSNSで「ホンモノ」のレストアを見れる今日、彼らの審美眼はかなり高い。そして日産京都自動車大学校には技術が確かな教員がたくさん存在している。鉄板を引き出し、元の華麗な淑女のフェンダーへと修復が進む。

■「学生が頑張る”イイ話”みたいな宣伝にしたくはないんです」

学生が頑張る姿に胸を打たれるが、彼らに話を聞いても決してPRのためではなく「僕らの持てる技術をオーナーさんのために生かしたい」という
学生が頑張る姿に胸を打たれるが、彼らに話を聞いても決してPRのためではなく「僕らの持てる技術をオーナーさんのために生かしたい」という

 こんなすばらしい活動なのだが、実際のところ派手に世間に露出しているものではない。日産自動車大学校取材歴9年目の担当だが「話は知っていたけれど……」程度の認識だった。

 そこには学校と生徒たちの熱い思いがある。

「ストーリーも含めて宣伝にはうってつけじゃないですか。けど違うよねって。僕らは天国のオーナーに見てほしいからレストアしている。あくまで”オーナーとご家族にお戻しする”ための作業なんです。だから自分たちが凄いというアピールをしたいわけじゃない」と関係者は語る。

オーナーから預かったクルマ。余計なエッセンスを入れずにオーナーの遺したものを生かしていく
オーナーから預かったクルマ。余計なエッセンスを入れずにオーナーの遺したものを生かしていく

 学生たちはクラブ活動として週1~2回放課後にS130と対峙する。溶接やボディのたたき出し、パテ盛りなど専門的な作業はオートサロンでカスタム車を制作する「カスタマイズ科」も応援に入る。

「カスタマイズ科の塗装仕上げはノンポリ(研磨ナシ)です。垂れる寸前まで厚く塗る。磨かないのが一番仕上げは綺麗なんです。この時代にそんなレベルで塗装を教える必要はないかもしれない。けれどそれこそ職人技ですよ。Zも必ずオーナーさんが喜ぶように仕上げます」と先生は語る。

 今回特別に取材させてもらったこのフェアレディZ。私は実際のところどのように記事にするべきか悩んだ。学生や先生、そしてYさんへの思いを考えるとベストカーらしからぬ硬い語り口になってしまったがお許し願いたい。

 このフェアレディZは必ず復活する。いつの日かオーナー、そして家族の元に帰る日を目指して、学生と先生たちの挑戦は今日もひそかに続く。

サフ塗りが終わったボンネット。しっかりした技術力がすぐにわかる
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