ミニバンでは当たり前の3列シート。でも3列目に乗り込むときって、たいてい窮屈な姿勢を強いられる。2列目のシートをスライドさせたり、シートのすき間から乗り込んだり。いっそのこと、3列目にもドアを付けたらどうだろう。はい、その通り。この世にはすでに3列ドアのクルマがあったのだ!
文/ベストカーWeb編集部、写真/メルセデス・ベンツ、アウディ
■お付きの人のために専用ドアを用意!
ミニバンで3列目に座る人は乗り降りに苦労する。2列目に座る人を待たせておいて、スライドさせたシートのすき間などから乗り込まねばならない。この苦労をなんとかしようとメーカーは頭を悩ませてきた。先代のホンダ・ステップワゴンがテールゲートに「わくわくゲート」という乗降用ドアを付けたのもその一例だ。
しかし一番まっとうな発想は「3列目にもドアを付けちまえ!」ではなかろうか。実際、歴史をさかのぼってみると、3列ドアを採用したクルマが存在する。
歴史上もっとも有名な3列ドアと言えば、メルセデス・ベンツ600プルマンだろう。このクルマはSクラスのご先祖ともいえる600系(W100型)にラインナップされたリムジン仕様で、1963年に発表された。
リムジンだけに全長が6.2mにもなるバカ長いクルマだが、6.3リッターV8エンジンを積み、動力性能はスポーツカーなみだったという。
3列ドアのほか普通の2列ドアもあったが、シート自体はすべて3列というわけではなく、後席と向かい合わせに折り畳みシートが備わるだけの仕様もあったようだ。主賓と同じドアを使うのは失礼とばかりに、わざわざお付きの人のためにドアを用意したという発想が凄すぎる(ワンオフで内装は自由にいじれたようだが)。
■日本にも輸入されたベンツの6枚ドア
メルセデスは600プルマン以降も3列ドア仕様を発売している。それがW124型Eクラスに設定されたリムジン仕様だ。W124型Eクラス自体は1985年に登場した傑作モデルで、その完成度に惹かれていまでも乗り続けるオーナーは少なくない。
3列ドアは「6ドアリムジン」と呼ばれ、標準ボディを80cmストレッチして3.6mものホイールベースを確保したもの(全長5.54m)。こちらは600プルマンとは異なり、完全な3列シートをもつ点が特長で、どこに座っても平等な居住性を味わうことができた。
普通リムジンは一度ボディを切断するため剛性面などが不安だが、このクルマはメルセデス・ベンツがホワイトボディから制作したモデルという点が強み。乗り心地もバツグンだったという。
バブル景気と重なったこともあって、W124の6ドアリムジンはヤナセの手で日本に正規輸入もされている。エンジンは2.6Lが標準だったが、3.2Lなどに載せ替えるオーナーも少なくなかった。わずかながら現在も中古車が流通しているようだ。
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