Zやロードスターなど、スポーツカーなら2人乗りは普通だが、中には3人乗りという特殊なクルマが存在する。なんで4人乗りじゃなくて3人? いったいどうやって座らせるんだろう?
文/ベストカーWeb編集部、写真/日産、マクラーレン
■運転席を真ん中に置いたマクラーレンF1
スポーツカーは高い運動性能を実現するため、乗車定員は二人ということが少なくない。
しかし人が乗り込むキャビンを作って、フロントシートの後ろに余裕があれば、「ここをシートにしちゃおうかな」と考えるのは人情というもの。というわけでポルシェ911やアウディTTクーペには、子ども向け、あるいや荷物置きとして使えるちっちゃい後席シートが付いている。
しかしこれ以外にも変な車内パッケージがある。それが3人乗りレイアウトというものだ。
代表的なのが、1992年に登場したマクラーレンF1だろう。鬼才ゴードン・マレーがデザインした運動理論の塊のようなクルマだが、こいつはキャビン中央にドライバー、その両脇に、ちょっと後方オフセットして二人のパッセンジャーが座れた。
なんでこんなレイアウトなのか。それはゴードン・マレーが、フォーミュラーマシンのような左右対称の視界を望んだから。タイヤの荷重を左右そろえたいという欲求もあったに違いない。
ちなみにルームミラーは、フロントガラス中央じゃなくて、両脇にひとつずつ付いていた。さらには乗り降りが大変だったことも事実だ。
■後席を横向きに付けたフェアレディ1500
歴史に残るもう1台の3人乗りスポーツカーといえば、日産(ダットサン)のフェアレディ1500だろう。まだフェアレディに「Z」が付く前の1962年に発売されたSP310型である。ちなみに310という数字は、ブルーバード310系のシャシーを流用したことに由来する。
このフェアレディ1500、なんと運転席の後ろに横向きに座る後席がひとつ付いていたのだ。運転席側に座り、助手席側に足を出して座ったのだ。
この3席配置、まさに「後ろにちょっと空間があったから」という発想だったように思えてならない。「前向きシートじゃ足が置けないしなあ……うーん、なら横向きに置いちゃえ!」というわけだ(笑)。
しかしこいつにはクレームも多かった。横向き後席のお陰で運転席が後ろにスライドできず、大柄な人が窮屈な姿勢を強いられたからだ(日産もこれは承知していたようで、後席を右側に付けたのも、左ハンドルになるアメリカや欧州ではシートをスライドできるようにという配慮だったらしい)。
結局この3座仕様は1964年のマイナーチェンジで廃止、たった2年だけ作られた貴重なモデルとなったのだ。 ちなみに現在は、安全上の観点から走行中の横向き座りが禁止されている。フェアレディ1500はもはや実現できない、記憶の中の3人乗りとなってしまった。
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