コンセプトカーから市販化したモデルも数多くあるが、「にぎやかし」なコンセプトカーだってある。これまで登場した数々のコンセプトカーの中から、「あとちょっとで市販化したのでは」という現実味のあったスポーツ系コンセプトカーを紹介していく。
文:西川昇吾/写真:トヨタ、ベストカー編集部 ほか
■トヨタ S-FR
近年の記憶に新しいところで、話題となったスポーツカーのコンセプトカーと言えばトヨタのコンパクトスポーツ「S-FR」だ。
2015年の東京モーターショーに登場したこのモデルは、86よりもコンパクトでありながらFRレイアウトを採用していて、発表されていたボディサイズは全長3990mm×全幅1695mm×全高1320mm、ホイールベース2480mmでなんと5ナンバーサイズであった。
数値だけ見ればNB型のロードスターに近い。コンパクトでリーズナブルなエントリーモデルのFRスポーツカーの誕生を予感させるものであった。
インテリアを見てみるとファッショナブルな雰囲気だが、現実味ある仕上がりとなっていて「これは市販化が近いのでは?」とも予想されていた。しかし、時が経つにつれてそのような噂は聞こえてこなくなってしまった。何らかの理由で市販化が無くなってしまったのであろうが、計画復活が望まれる1台だ。
■マツダ RX-01
最近ロータリーエンジンの復活が話題となっているマツダ。現在は発電用のロータリーエンジンを搭載したMX-30が存在しているが、ロータリーエンジンを駆動用に使用したモデルはRX-8が最後だ。
マツダの歴史を見れば、ロータリースポーツはRX-7からRX-8へと移り変わった訳だが、歴史のifがあったとするならばそこに存在したかもしれないコンセプトカーがRX-01だ。
当時新開発の自然吸気ロータリーエンジンを全長4055mm×全幅1730mm×全高1245mmというコンパクトなボディに搭載。車重は1100kgほどと言われていて、サイズ感や車重から考えると多くのクルマ好きが夢見た「ロードスターにロータリー搭載」そんなパッケージに近い仕様と言える。
また、最高出力220PSとアナウンスされていた新開発のロータリーエンジンは排気ポートをサイドハウジングに移設したもので、この技術はのちにRX-8で生かされているが、このRX-01ではオイルの潤滑方式がドライサンプになっていたのも見逃せないポイントだ。
インテリアは市販車を思わせる現実的な仕上がりとなっていて、市販化への期待も大きかったが、当時のマツダは経営難であり、親会社であったフォードの意向に従うしかなかった。そのような背景からかRX-01の市販化の可能性は無くなってしまった。
■スズキ C2
スズキのFRスポーツと言えばカプチーノがポピュラーな存在だ。しかし、それ以外のモデルがメジャーになる可能性もあり得た。それが1997年の東京モーターショーに登場したC2だ。
驚かされるのが搭載したパワーユニット。1644ccのV8ツインターボエンジンを搭載していて、最高出力は250PSを7000rpmで発生する。
これだけ見ると浮世離れしたコンセプトカーに見えるが、排気量や最高出力発生回転数などエンジンの具体的なスペックが明らかになっていたことを見ると、案外このエンジン本気で開発していたかもしれない。
バイクも作っているスズキのことだから、バイク用の4気筒エンジンを2つくっつけてV8にしたユニットを開発していたのではないだろうか?
エンジンには驚かされるC2だが、全長3650×全幅1650×全高1220mm、ホイールベース2230mmというコンパクトなボディサイズ、そして205/50R16のタイヤサイズなどが具体的な数値で示されていたこと、また内外装が現実的な雰囲気であったことを考えると、市販化の可能性は高かったかもしれない。
もしも登場していたらコンパクトながら圧倒的な動力性能を誇るスポーツカーになっていたはずだ。
いつの時代もスポーツカーには夢がある。しかし、今回紹介したのはもしも市販化されていたら、高価格帯ではなく庶民にも変えそうな「現実的な夢」を見せてくれるスポーツカーたちだ。今後もそんな夢が登場し、現実になる未来を期待したい。
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