残溝以外でタイヤの継続使用が困難となるケース
タイヤの路面への食付きが落ちるのは、摩耗が進み残溝が浅くなっただけではございません。ゴムの劣化の可能性もあります。
劣化したゴムはわかり易く言えば硬くなってますので、新品時に比べて伸び縮みしにくく、路面の細かい凸凹への密着度が下がるため食付きが悪くなります。これは発進時、制動時、旋回時に大きく影響します。
ドライバーの想像以上にスリップした場合は制御が難しく、特に制動時は大型車では慣性も大きく働くのでコントロールが効かなくなる可能性が高まり、危険ですね。
またタイヤのすり減り方、極端な偏摩耗によってもタイヤの継続使用は難しいです。
フロントで使用したタイヤはトレッドの端、或いは両端が減って行きます。高速道路を使用しない、ほぼ地場限定の車両で細かく旋回を繰り返す車両は、足回りが正常でもタイヤは片減りしますので、ある程度偏摩耗が出てきたらローテーションすることでしのげます。
ところがついつい(ローテーションせずに)乗り過ぎたり、何らかの理由で足回りに異常が発生して偏摩耗の進行が極端に早くなった場合など、トレッドの7割くらいの範囲で残溝が充分でも、偏摩耗部分から構造材のワイヤーが見えそうな(あるいは見えている)ことがあります。その場合は使用を控えてください。ローテーションでリアに回すのも良くありません。
ワイヤーが見える事象はフロントだけではなくリア軸使用でも見られます。これは単純に使い過ぎなのですが、リアの場合はセンター付近の摩耗が早く、ワイヤーの露出面積も大きくなります。
このワイヤーはベルトと呼ばれる部材で、昔の桶で云うところの「タガ」の役割があります。ベルトの役割はトレッド部分の剛性を高めタイヤ全体の構造材を締め上げることです。
つまりベルトが露出して切れたりすれば剛性は落ち、構造材も充分締め上げていないのでちょっとした衝撃に弱く、充填している空気圧に負けてバーストに至る可能性が大変高くなります。
また、タイヤサイド部分の傷や膨らみは無視してはいけません。タイヤサイドの傷は、殆どが縁石等との接触です。広い範囲で擦った傷だったり、狭い範囲だけど深くえぐったり……。
タイヤサイドにあるメーカー名、パターン名が少し擦れて筋が出来る位ならおそらく問題はないのですが、サイド部分のゴムが欠け、内部構造材のワイヤーが見えていたらアウトです。
このワイヤーはカーカスコードと言います。高圧の空気を充填するタイヤは内側から外側へ多大な力が常に掛かっており、それを押さえている部材がカーカスコードです。ワイヤーが見えて損傷が無い場合でも、空気にされされる事で酸化が進み強度が低下するので、これが見えていたら即、交換レベルです。
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