連結総重量44トン・航続距離500kmの大型長距離EVトラックがついに発売! 「メルセデス・ベンツeアクトロス600」の先進性能とは?

強力なパワーと省電費性能

eアクトロス600・セミトラクタ4×2のシャシーフレームから一部が見える2モーター・4段自動変速機内蔵のeアクスル。なお、4段自動変速機にはプラネタリーギアを用いており、エア圧で作動するとのことだった
eアクトロス600・セミトラクタ4×2のシャシーフレームから一部が見える2モーター・4段自動変速機内蔵のeアクスル。なお、4段自動変速機にはプラネタリーギアを用いており、エア圧で作動するとのことだった

 直接走りを担うのが、総電圧800ボルト、連続出力400kW(543PS)・最高出力600kW(815PS)という、強力なeアクスル(電動アクスル)である。ダイムラー自ら開発したこのeアクスルは、2基のモーターと4段自動変速機をドライブアクスルと一体化したもので、開発責任者によると、多くの場合モーターは1基のみ作動し、高負荷時などで2基が作動するという。
 
 4段自動変速機は、モーターの出力(回転数)を抑えながら、負荷に対して必要な駆動力を引き出し、電力消費(電費)を向上させるために採用した。

 「EVに変速機」というと違和感を覚える人がいるかもしれないが、空車時と積載時で車両総重量・連結総重量が大きく変化するトラックでは、変速機によって高速巡航など高負荷・定速走行時における電費を最適化できるのだ。ちなみに都市内~郊外走行をメインとする「~300/400」では、2段自動変速機を搭載している。

 そして、eアクトロス600には、先読みパワートレイン制御「PPC(プレディクティブ・パワートレイン・コントロール)」を実装する。

 PPCは、ディーゼル車や大型燃料電池トラック「メルセデス・ベンツGenH2トラック」ですでに導入している技術で、eアクトロス600では、GPSリアルタイム位置情報と3D地図情報、交通標識から、クルーズコントロール作動時における効率的な電動パワートレイン制御を自動で行ない、回生(減速エネルギーによる発電)を効率的に得ることで、電費を改善する効果が期待できる。

大型EVトラックならではの装備

eアクトロス600の運転席。全面カラーLCDのメーターパネルや多機能ディスプレイなど、現行型アクトロスとほとんど変わらない。本文では省略したが、最新のADAS(先進ドライバー支援システム)や車両接近通報装置(AVAS)ももちろん搭載している
eアクトロス600の運転席。全面カラーLCDのメーターパネルや多機能ディスプレイなど、現行型アクトロスとほとんど変わらない。本文では省略したが、最新のADAS(先進ドライバー支援システム)や車両接近通報装置(AVAS)ももちろん搭載している

 一方、減速時には、ディーゼル車と同様に5段階の補助ブレーキ操作によって、回生ブレーキを活用できる。さらに、ワンペダル運転モードの選択も可能で、アクセルオフ時には回生ブレーキの減速が働き、運転操作のイージー化と、サービスブレーキ(空気圧ディスクブレーキ)の使用頻度低減が両立できる。

 大重量級EVならではの装備が、「HPBR(ハイパワー・ブレーキ・レジスタ)」と呼ばれる大容量の水冷式ブレーキ抵抗器だ。これは、長い下り坂などでバッテリー満充電となった場合でも、回生ブレーキの制動能力を維持するもので、電力を熱に変換、その熱媒体となる冷却水を循環させる熱交換システムである。EVのモーターを、リターダとして活用するための補機ともいえる。

 HBPRは、「~300/400」の場合、キャブ後面(セミトラクタ)またはシャシー中央部サイド(フルトラクタ)に熱交換器があって、決して小さくはないスペースを占めていたのだが、「600」では、ディーゼル車のラジエターと同じ位置、走行風の当たりやすいキャブ正面に熱交換器を内蔵するなど、搭載方法が洗練されている。「~300/400」から数年のうちに、大型EVトラックのパッケージングが進化したわけだ。

 また、eアクトロス600には専用の電動パワーテイクオフ装置(ePTO)を2つ設定する。1つは、油圧ポンプなどへ回転動力を供給する電動機械式ePTOで、ダンプやスライドフロア、粉粒体運搬車などに対応する。もう1つは、直流または交流電気を供給する電源ePTOで、冷凍ユニットを搭載した冷凍車に対応できる。

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