ナヴィスター・インターナショナル
ナヴィスターが「インターナショナル」ブランドのスーパートラック2を公開したのは2023年6月で2009年のベースラインに対して170%の効率向上となる16MPGの燃費を実現した。軽量化、転がり抵抗の軽減、空力改善、高効率パワートレーンの採用などによるものだ。
ナヴィスターが注力したのは主にパワートレーンで、とくに高電圧系のハイブリッド技術は、フル電動車の商用化に向けて可能性を示したという。
トラックの電動化にコミットする同社は自動車部品メーカーのボッシュと共同でスーパートラック2用のハイブリッド技術を開発した。もちろんエンジンの効率向上も図り、フリクション低減、エアフローの見直し、シリンダーの形状変更などにより、エンジン単体で燃費効率を2%向上した(スーパートラック1比)。後処理装置も改善し、全体として正味熱効率(BTE)は55.2%に達した。
またトレーラと一体的な設計も効率化に寄与している。ドラッグを低減する軽量荷台、ボディ下のエアフローのコントロール、車体に組み込んだソーラーパネル、空力改善のための車高調整機能などだ。
なお、ナヴィスターはスーパートラック2の開発期間中にトレイトン・グループ(フォルクスワーゲンの商用車部門)に入ったが、先進技術や安全機能などにグループの技術を活用しているそうだ。
カミンズ&ピータービルト
ピータービルトはエンジンメーカーのカミンズと共同でスーパートラック2に取り組んでおり、2022年10月に米国トラック協会が主催するイベントで初めて公開している。
空力改善、軽量化、ドライブトレーンの改良を組み合わせるというアプローチで、燃費向上のためにエンジンをダウンサイズするのが主流となる中、あえてカミンズの15L級という大排気量のディーゼルエンジンを採用する。
48ボルトのマイルド・ハイブリッドシステムと組み合わせ、補機等を電気で駆動することでエンジン負荷を低減し、全体的な効率を向上するというコンセプトだ。
エンジンの排熱利用や、二重ループ排ガス再循環システムなど、ドライブトレーンによる効率向上に加えて、ハイウェイ走行時に自動で車高を低くするシステムにより空気抵抗を低減している。
また、トラクションが必要な低速時は6x4駆動だが、高速走行時は駆動軸をディスエンゲージして高効率な6x2駆動とする機能も採用した(同様の手法はテスラの電気トラック「セミ」なども採用している)。タイヤはブリヂストン製の低転がり抵抗タイヤ。
組み合わされる53フィートのトレーラはトレーラメーカーと共同で一体開発を行なったもので、ルーフに15枚のソーラーパネルを配置し、これにより電力を供給する。ほかに空力デバイスを炭素繊維製として軽量化も行なった。
サイドミラーの代わりに採用したカメラシステムも空力改善に寄与している。ちなみに運転席はキャブの中央に配置され、ラップアラウンド型のウィンドシールドとともに、ドライバーにパノラマビューを提供する。
「スーパートラック3」は電動化へ
DOEは2021年4月に「スーパートラック3」を含むFOAを発表している。今回のイニシアチブはトラックの電動化と排出削減のためのEVインフラの拡充を目的としており、総額1億6200万ドルの資金の内、約1億ドルが中・大型トラックの電動化と効率向上、排出削減を実現する技術開発のために提供される。
その対象となっているアプローチは、フル電動のほかに、再生可能なバイオディーゼルを使用するプラグインハイブリッドや、水素・燃料電池技術などがある。燃料電池による(EVトラックの)レンジエクステンダーといったハイブリッド戦略も対象だ。
いっぽう約6200万ドルは「低温室効果ガス車両技術の研究、開発、実証、および実用化」として排出削減に寄与する革新的なソリューションを支援するために使われる。EVの普及を後押しするため充電インフラの拡充や、EVカーシェアリング、住宅への充電器設置などが対象。またオープンプロジェクトとして低排出エンジンや代替燃料の開発も行なう。
プレスリリースの中でDOEのジェニファー・M・グランホルム長官はスーパートラックの意義を次のように述べている。
「2050年までに炭素排出のネットゼロを実現するために、米国で最大の排出源となっている輸送セクターで積極的なCO2削減を行なう必要があります。
これまでに2回行なわれたDOEのスーパートラック・イニシアチブは、北米の大型トラック市場大手のトラックメーカーが参加し、燃費効率の飛躍的な向上をもたらしました。今回のスーパートラック3は、中・大型トラックの電動化と充電網のアクセス、そして低排出の内燃機関の開発に焦点を当てています」。
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